プロジェクトマネージャ午後I 事例記述令和7年 秋期
午後I 問1

問1 生成AIを活用したシステムの開発・導入・運用・保守を行うプロジェクトの計画とリスクマネジメント

テーマ:生成AIを活用したシステムの開発・導入・運用・保守を行うプロジェクトの計画とリスクマネジメント
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長文事例本文

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問1 生成AIを活用したシステムの開発・導入・運用・保守を行うプロジェクトの計画立案に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。  Q予備校では習熟度テストを実施して生徒の理解度を測定し,生徒自身に理解不足の箇所を認識させ,再学習をさせている。また,理解不足の箇所を中心に講師が個別指導を行い,生徒の理解度を高める仕組みを取り入れている。  習熟度テストには,生徒が自身の表現で解答を記述する問題がある。全ての講師が自身の担当する教材・領域におけるこのような問題の問題作成者となって,問題及び採点基準を作成し,採点専門のアルバイト(以下,採点者という)が採点基準を適用して答案を採点する。採点者は全ての答案の採点終了後,自身では採点基準の適用ができず採点できなかった答案を講師に引き渡す。講師は,採点基準をより適正なものにするための,採点基準を具体化したり解釈を付け加えたりする情報(以下,補足情報という)を追加して,採点者が採点できなかった答案の採点を確定する。近年,この補足情報を追加し採点を確定する作業が多発して作業負荷が高まり,講師は個別指導の時間を十分に取れない状況になっている。  また,再学習及び個別指導は生徒の理解度を正確に測定することが前提となるので,適正な採点基準を作成すること,及び採点基準を理解し多数の答案に採点基準を適用できる採点の経験値の高い採点者を確保することによって,高い採点の信頼性を保つことが重要である。  講師からは,採点基準作成の経験値が低いと正確性が担保された適正な採点基準を作成することは難しいという意見がある。また,採点者から採点基準の適用ができない答案を引き渡される際に,採点基準をより適正なものにする補足情報の候補も併せて提示してもらえれば,それを参考に補足情報を追加できるので講師の作業負荷を軽減できるという意見もある。しかしながら,アルバイトであり,採点基準作成の経験のない採点者に,補足情報の候補の提示は期待できないとの意見もある。採点者からは,採点基準が適正でない場合や自身の採点の経験値が低い場合は,採点基準の適用ができない答案が増えるとの意見がある。  以上から,Q予備校の経営陣は生徒の理解度を高める仕組みを適切に運用するために,“高い採点の信頼性を保つこと”と“講師の作業負荷を減らすこと”とを両立させることが課題であると考えている。 〔生成AIを活用したシステムの導入可能性の調査結果〕  経営陣は,適正な採点基準の作成及び採点の支援に大規模言語モデル(Large Language Models)の生成AI(以下,生成AIという)を活用したシステムを導入することによって,これらの課題を解決でき,さらに,採点者を不要にできるのではないかと考え,システム部のR課長と教務部のS課長に生成AIを活用したシステムの導入可能性を調査することを指示した。  R課長とS課長が,生成AIを活用したシステムの導入支援ベンダーK社のサポートを受けて調査した結果,次のことが分かった。 ・過去の習熟度テストの問題と採点基準などから正確性・多様性・網羅性が担保された初期の学習データを用意して生成AIに学習させると,生成AIは生徒の答案などから採点基準をより適正なものにする補足情報を生成できる。 ・講師がこの補足情報を精査の上追加することによって,生成AIによる採点は過去の採点と同等以上の採点の信頼性を保てる。 ・システム稼働後にも新たな適切な学習データを用意して生成AIに追加で学習させることによって,継続的に採点の信頼性を高められる。  R課長とS課長から報告を受けた経営陣は,生成AIの導入に前向きであった。ただし,一部の役員は,高い採点の信頼性を保てなくなるような事態が起きると,生徒の理解度を高められないだけではなく,Q予備校を信頼できなくなった生徒が退校することを懸念し,生成AIの導入は時期尚早という意見であった。また多くの講師は,採点基準をより適正なものにする補足情報を生成したり,過去の採点と同等以上の採点の信頼性を保てたりする生成AIの効果に納得していないので,今のやり方に固執する可能性がある。  この調査結果を受けてQ予備校は,①採点の信頼性を過去の採点と同等以上にすること,及び講師の作業負荷をこれまでより軽減することをプロジェクト目標として,K社のサポートを受け,生成AIを活用した補足情報作成や採点を支援するシステム(以下,採点支援システムという)の開発・導入・運用・保守を行うプロジェクト(以下,本プロジェクトという)の立ち上げを決定した。プロジェクトマネージャ(PM)に任命されたR課長は,経営陣の懸念を払拭し,目標の達成を目指すプロジェクト計画の作成に着手した。 〔プロジェクト計画の作成方針〕  R課長は調査結果から,本プロジェクトは生成AIを活用する点で,Q予備校でこれまで主だったSaaS導入プロジェクトとは,作業の内容や進め方などに大きな違いがあると考えた。そこで,プロジェクト計画の作成に先立ち,K社のサポートも受けてプロジェクトに関わる各プロセスにおける作業の違いを表1にまとめた。
表1 プロジェクトに関わる各プロセスにおける作業の違い 拡大
表1 プロジェクトに関わる各プロセスにおける作業の違い
 R課長は,これまでのQ予備校のSaaS導入プロジェクトの計画を参照しつつ,プロジェクトに関わる作業の違いと生成AIの導入可能性の調査結果を踏まえて,プロジェクト計画を次の方針で作成することにした。 ・開発・導入プロセスでは,採点基準作成の経験値の高い講師が,習熟度テストの問題と採点基準,補足情報,答案,採点結果から生成AIに学習させる初期の学習データを用意する。 ・その上で,開発・導入プロセスでは,K社が初期の学習データを生成AIに学習させることによって,処理品質を一定以上に向上させる。その後,全ての講師が参加する効果検証テストを実施する。具体的には,補足情報を精査の上追加することによって,過去の採点と同等以上の採点の信頼性になるかどうかの検証を行う。 ・効果検証テストでは,講師の作業負荷軽減の効果も検証する。 ・システム稼働後も,継続的に採点の信頼性を高められるように,全ての講師が関わる体制となる運用・保守プロセスを設計する。具体的には,全ての講師が,正確性を担保した新たな学習データを用意し,生成AIに追加で学習させる。 ・プロジェクト目標の達成見通しを経営陣に適宜報告する。 〔プロジェクト目標の達成に向けたリスク対策〕  R課長は,K社のサポートを受けて,プロジェクト目標の達成に関わる次に示すリスクを特定し,リスク対応策を検討した。 (1) 採点の信頼性を過去の採点と同等以上にできない,又は,継続的に高められないリスク  初期の学習データの用意が不十分だった場合は,最新の入試問題に対応する習熟度テストの問題などに対して,採点基準をより適正なものにする補足情報を生成できず,プロジェクトの目標である採点の信頼性を過去の採点と同等以上にすることが達成できないリスクがある。本リスクへの対策として,初期の学習データを用意する際に,教材に含まれるキーワード集や最新の入試問題などの記述例を分析し,習熟度テストの問題と採点基準,補足情報などでは不足する用語や記述スタイルも学習データとして生成AIに学習させることにした。  また,システム稼働後に新たな適切な学習データを追加で学習させられず,継続的に採点の信頼性を高めることができないリスクがある。R課長は,本リスクへの対策として,運用・保守プロセスで,生成AIに追加で学習させる学習データとして,毎回の習熟度テストの問題と採点基準,補足情報,答案,採点結果が利用可能と考えた。 (2) 講師の作業負荷をこれまでよりも軽減することができないリスク  R課長は,採点基準をより適正なものにする補足情報を生成したり,過去の採点と同等以上の採点の信頼性を保てたりする生成AIの効果に納得していない講師は,プロジェクトの目標である作業負荷軽減が達成できないリスクがあると考えた。R課長は,本リスクへの対策として,効果検証テストにおける講師の作業負荷軽減の効果の検証において,採点支援システムが提供する,生徒の答案などから補足情報を作成する機能を重点対象とし,生成された補足情報の正しさや,補足情報が提示されることによる自身の作業負荷の軽減を実感してもらうことにした。

設問一覧 & 解答・演習

まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。

設問1記述問題
制限字数:20 字以内
〔生成AIを活用したシステムの導入可能性の調査結果〕について,本文中の下線①のプロジェクト目標を定めたのは,Q予備校としてどのような効果を狙うためか。プロジェクトがもたらす成果の観点から20字以内で答えよ。
0 / 20 文字
設問2(1)記述問題
制限字数:35 字以内
〔プロジェクト計画の作成方針〕について答えよ。
(1) R課長が,プロジェクト計画の作成に先立ち,表1にプロジェクトに関わる各プロセスにおける作業の違いをまとめた目的は何か。35字以内で答えよ。
0 / 35 文字
設問2(2)記述問題
制限字数:20 字以内
〔プロジェクト計画の作成方針〕について答えよ。
(2) R課長が,開発・導入プロセスで,初期の学習データを用意する担当者を採点基準作成の経験値の高い講師とする目的は何か。20字以内で答えよ。
0 / 20 文字
設問2(3)記述問題
制限字数:35 字以内
〔プロジェクト計画の作成方針〕について答えよ。
(3) R課長が,効果検証テストに,一部ではなく全ての講師に参加してもらう狙いは何か。運用・保守プロセスに関するものを35字以内で答えよ。
0 / 35 文字
設問2(4)記述問題
制限字数:35 字以内
〔プロジェクト計画の作成方針〕について答えよ。
(4) R課長が,プロジェクト目標の達成見通しを経営陣に適宜報告する狙いは何か。35字以内で答えよ。
0 / 35 文字
設問3(1)記述問題
制限字数:30 字以内
〔プロジェクト目標の達成に向けたリスク対策〕について答えよ。
(1) R課長が,最新の入試問題への対応などに向け,習熟度テストの問題と採点基準,補足情報などでは不足する用語や記述スタイルを学習データとして生成AIに学習させることによって,どのような効果を狙ったのか。30字以内で答えよ。
0 / 30 文字
設問3(2)記述問題
制限字数:30 字以内
〔プロジェクト目標の達成に向けたリスク対策〕について答えよ。
(2) R課長が,継続的に採点の信頼性を高めるために,生成AIに追加で学習させる学習データとして,毎回の習熟度テストの問題と採点基準,補足情報,答案,採点結果が利用可能と考えた理由は何か。30字以内で答えよ。
0 / 30 文字
設問3(3)記述問題
制限字数:25 字以内
〔プロジェクト目標の達成に向けたリスク対策〕について答えよ。
(3) R課長が,生成AIの効果に納得していない講師が,作業負荷軽減を達成できないリスクがあると考えたのはなぜか。生成された補足情報の正しさや作業負荷の軽減を実感させる対策を取ったことを踏まえ,その理由を25字以内で答えよ。
0 / 25 文字
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【出題趣旨】IPA公式発表
生成AI を活用したシステムの開発・導入・運用・保守を行うプロジェクトでは,これまでの開発プロセス との違いを理解し,その特性に応じたプロジェクト計画を作成する必要がある。 本問では,テストの採点などに生成AI を活用するプロジェクトを題材として,プロジェクトの計画の立案 に先立って,各プロセスにおける作業の,SaaS 導入プロジェクトとの相違点を踏まえたプロジェクト計画の方 針の立案と,マネジメントの対象とするリスクの特定やリスク対応策の検討を行う方法について,プロジェク トマネージャ(PM)としての実践的な能力を問う。
【採点講評】IPA公式発表
問1では,生成AI を活用するプロジェクトを題材に,プロジェクトの特性を踏まえたプロジェクト計画の 作成とリスク対応策の検討について出題した。全体として正答率は平均的であった。 設問2(1)は,正答率が平均的であった。違いの可視化及びその理解にとどまり,狙いであるテーラリングに 言及できていない解答が多かった。プロジェクト計画は適用技術や開発アプローチなどに整合させることが重 要であり,それに必要となる情報を可視化する必要がある点を理解してほしい。 設問3(2)は,正答率がやや低かった。生成AI の学習データとして求められる正確性・多様性・網羅性につ いて,それぞれ,初期及び追加でどのように担保できるのかどうかを見極め,それにふさわしい方法での準備 を行う必要のあることを意識してほしい。
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