ネットワークスペシャリスト午後II 総合事例記述平成28年 秋期
午後II 問1

問1 WebRTCやマルチホーミングを取り入れたネットワークシステムの拡張

テーマ:WebRTC・SIPおよびマルチホーミングを取り入れたネットワークシステムの設計・構築・移行
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長文事例本文

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問1 ネットワークシステムの拡張に関する次の記述を読んで,設問1〜5に答えよ。  工務店のA社は,全国規模で住宅や店舗の施工を請け負っている。施主への情報提供に力を入れており,次の三つの機能をもつ情報システムを稼働させている。 ・施工情報管理:外出先又は社内にいるA社の社員や施主が,タブレット端末やPCで動作する,Webブラウザを使って,A社データセンタのWebサーバが管理する施工情報にHTTPSプロトコルでアクセスする(以下,Webブラウザと,Webブラウザが動作しているタブレット端末やPCを,どちらもブラウザという)。 ・コールセンタ:施主からの問合せ電話を,データセンタのIP-PBXを使って,A社コールセンタのオペレータが受け付け,必要に応じて営業部や技術部へ転送する。 ・インターネットアクセス:A社の社員が,社内からブラウザを使ってインターネットにアクセスする。  A社の現行情報システムの概要を図1に示す。
図1 A社の現行情報システムの概要 拡大
図1 A社の現行情報システムの概要
 情報システム部は,現在,施主との情報連携を強化するために,ブラウザを活用した情報システムの機能拡張に取り組んでいる。ネットワーク担当のB君が,ネットワークシステムに関する現行仕様の調査と,機能拡張に伴うネットワーク拡張計画の作成を行っている。  情報システムの機能拡張の構想を次に示す。 ・マルチホーミング:今後,社外との通信が更に重要になるので,データセンタとインターネットとの接続を二重化する。 ・ブラウザを使ったビデオ電話:施主とA社の社員がブラウザを使って,施工状況などを動画で確認できるようにする。このビデオ電話はブラウザ上で動作するアプリケーション(以下,APという)をA社のWebサーバからダウンロードし,AP間の通信によって実現する。 ・ブラウザを使った音声電話:施主や外出先のA社の社員がブラウザを使って,社内のA社の社員と音声電話ができるようにする。この電話機能にもビデオ電話と同じAPを使う。IP-PBXを介した,社外のブラウザ上で動作するAPと社内のIP電話機との通信によって実現する。 〔現行ネットワーク構成〕  A社の現行ネットワーク構成を図2に,図2中のスイッチに定義された現行IPアドレス空間を表1に,それぞれ示す。
図2 A社の現行ネットワーク構成(抜粋) 拡大
図2 A社の現行ネットワーク構成(抜粋)
表1 図2中のスイッチに定義された現行IPアドレス空間 拡大
表1 図2中のスイッチに定義された現行IPアドレス空間
 B君が調査した,A社の現行ネットワークシステムの仕様を次に示す。 ・図2中のブラウザ1がWebサーバ1とWebサーバ2へアクセスする際に,FWのNAT機能が宛先IPアドレスを変換する。変換前と変換後の宛先IPアドレスは,それぞれ表1中のIPアドレス空間アとイに属し,変換前と変換後のIPアドレスの組合せは1:1に固定されている(以下,宛先NATという)。 ・図2中のブラウザ2がインターネットへアクセスする際に,FWのNAT機能が送信元IPアドレスとウの両方をそれぞれ動的に変換する(以下,送信元NAPTという)。(a)変換後のIPアドレス用に二つのグローバルIPアドレスが割り当てられている。 ・FWのフィルタリング定義は,図1に示す情報システムの通信だけを許可している。 ・FWには,A社のドメイン権限をもったDNS機能がある。 ・2台のWebサーバ(Webサーバ1,2)は,FWのDNSラウンドロビン機能を使って負荷分散しており,3台以上の構成へもスケールアウトができる。(b)スケールアウトの際には,DNS機能に関する設定変更など,FWに複数の設定変更が必要となる。 〔マルチホーミング〕  B君は,二つのISPサービス(ISP1,ISP2)を同時に利用するマルチホーミングの構成を考えた。この構成では,A社が負荷分散の仕組みを用意する必要がある。調査したところ,マルチホーミング用の負荷分散装置(以下,LBという)があり,この装置は,負荷分散機能の他に,DNS機能,NAT機能をもつことが分かった。  B君はLBを利用した新たなネットワーク構成を考えた。  A社の新ネットワーク構成を図3に,図3中のスイッチに定義されたLANの新IPアドレス空間を表2に,それぞれ示す。
図3 A社の新ネットワーク構成(抜粋) 拡大
図3 A社の新ネットワーク構成(抜粋)
表2 図3中のスイッチに定義された新IPアドレス空間 拡大
表2 図3中のスイッチに定義された新IPアドレス空間
 LBを使ったマルチホーミングの概要を次に示す。 ・インターネット向けのDNS機能をFWからLBへ移し,ISP2を経由してもそのDNS機能を提供できるように,ドメイン登録業者に定義の追加を依頼する。その際,ISP1,ISP2のいずれからでも同じゾーンファイルが参照されるようにする。 ・LBのDNSラウンドロビン機能を使い,インターネットからA社内への通信の負荷分散を行う。(c)現行のWebサーバ用のグローバルIPアドレスに,新たなグローバルIPアドレスを加え,DNSクエリに対してそれらが交互に返るようにする。 ・A社内からインターネットへの通信は,ISP1とISP2への接続ポートに対して負荷分散を行う。その際,ISPへ送信するIPパケットの送信元IPアドレスは,送信先のISPから貸与されたグローバルIPアドレスに変換されるので,FWのNAT機能をLBへ移して一元化する。 ・(d)LBは,通信の行きと戻りを同じISP経由にする。 ・LBからISP1のルータ及びISP2のルータへそれぞれ定期的にping確認を行い,ISPの障害を検知した場合には,正常なISPだけを利用する。 〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕  情報システム部は,WebRTC(Web Real-Time Communication)に準拠したAPを導入する予定である。WebRTCは,ブラウザを使った音声,動画などの通信規約であり,W3C及びIETFから仕様が公開されている。このWebRTCを使ったビデオ電話では,APをダウンロードしたブラウザ間で直接通信(以下,AP間通信という)を行う。NAT機能が介在する場合のAP間通信の例を,図4に示す。
図4 NAT機能が介在する場合のAP間通信の例 拡大
図4 NAT機能が介在する場合のAP間通信の例
 サーバを介さない通信では,通信相手のIPアドレスを知る仕組みが必要である。図4の例では,NAT機能によってブラウザ2のIPアドレス〈p〉が〈g2〉に変換されている。その場合,ブラウザ1上のAPは,通信相手のIPアドレスとして,〈p〉ではなく〈g2〉を用いなければならない。  A社が導入するAPは,NAT機能によって変換されたIPアドレスを,STUNサーバから得る仕様となっている。図4の例では,ブラウザ2上のAPがSTUNプロトコルを用いてSTUNサーバ1,2から〈g2〉を得て,それをブラウザ1上のAPに通知する。  STUNプロトコルの概要は次のとおりである。 ・STUNクライアントは,STUNサーバへBindingリクエストを送る。 ・STUNサーバは,受け取ったIPパケットのヘッダから送信元のIPアドレスとポート番号を取り出し,Bindingレスポンス中のデータに格納して返す。 ・(e)STUNクライアントは,Bindingレスポンス中のデータから,自分とSTUNサーバ間のNAT機能の有無を知り,NAT機能が介在する場合には,そのデータからNAT機能が変換した自分のIPアドレスを得る。  B君は,STUNサーバへのアクセスから音声,ビデオ,データなどの交換までのAP間通信の概要をまとめた。B君がまとめたAP間通信の概要を,図5に示す。
図5 AP間通信の概要 拡大
図5 AP間通信の概要
 APをダウンロードしたブラウザは,図5中の①〜③でNAT機能を経由した最適ルートを確立する(以下,ホールパンチという)。ホールパンチの概要を次に示す。 ①,①' APはSTUNサーバ1,2にアクセスし,NAT機能が介在する場合の変換後のブラウザのIPアドレスを取得する。 ② APは,SDP(Session Description Protocol)オブジェクトを使って,①,①'で取得したIPアドレスとブラウザ自身のIPアドレスを,通信相手のAPへ通知する。その際,ブラウザ1,2とWebサーバ1,2間にHTTPSが使われる。 ③ APは,通知されたIPアドレスを宛先IPアドレスにして通信相手との通信を試み,相互に通信が成功した場合に,その宛先IPアドレスの組合せを最適ルートとする。 (f)図4のAP間通信は,このようにして確立した最適ルートを使っている。  なお,ホールパンチには,ブラウザのIPアドレスとNAT機能の変換ルールが,それぞれ一定時間変わらないという前提条件が必要である。例えば,図4中の〈p〉と〈g2〉は,AP間通信の間,関連付けられている必要がある。また,IPアドレスだけではなくポート番号の考慮も必要である。  B君は,AP間通信においてAPが使用するポート番号はあらかじめ決められていること,及びSTUNサーバを図3のネットワーク内に適切に配置することによって,ホールパンチがLBのNAT機能に対して有効に働くことをベンダに確認した。そして,(g)片方のISPが障害の場合にも利用できるように,STUNサーバのインタフェース(図3中のA,B)を,図3中の適切なスイッチに接続することにした。  次に,B君は,A社のマルチホーミング運用によって,図5中の通信がISP1とISP2に負荷分散されるかどうかを検討した。そして,図5から,データ量が多い④に用いられるISPは,エがオをアクセスするときのLBの振分け結果によって決まることを確認し,負荷分散が行われると判断した。 〔ブラウザを使った音声電話の通信〕  ブラウザを使った音声電話の通信では,社外のブラウザ上で動作するAPがIP-PBXを介して社内のIP電話機と通信を行う。  B君はIP-PBXのベンダからIP-PBXのWebRTC機能の情報を入手し,通信方式を検討した。B君が考えた,社外のAPから社内のIP電話機への通信の概要を,図6に示す。
図6 社外のAPから社内のIP電話機への通信の概要 拡大
図6 社外のAPから社内のIP電話機への通信の概要
 図6中の通信の概要は,次のとおりである。 ・APは,通信プロトコルカを使ってIP-PBXへアクセスし,①-1と①-2によって,通信プロトコルをキに切り替え,切り替えた通信プロトコルの上でSIPプロトコルに基づくシグナリングを行う。 ・IP-PBXは,2組のB2BUA(Back-to-Back User Agent)として動作する。(h)インターネット側の二つのUA(User Agent)には,それぞれグローバルIPアドレスを割り当てる。 ・IP-PBXはSession Border Controllerとして動作し,グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスを変換する。 ・(i)IP-PBXのLANインタフェース(図3中のC,D)を追加し,図3中の適切なスイッチと接続する。 ・図6中の通信の前に,クのFQDNに関するケクエリが,APからコへ発行されることによって,図6中のAPとIP-PBX間の通信はISP1とISP2に負荷分散される。 〔移行計画〕  情報システム部では,保守などでサービス停止の可能性がある場合には,サービス停止時間を関係部署へ連絡することになっている。また,連絡したサービス停止時間内に保守を終えてサービスを再開できるように,部内で作業計画を十分にレビューした上で保守を行う運用ルールも設けられている。  B君は,今回の機能拡張に関して,サービス停止時間を見積もりながら,利用者への影響が極力小さくなるような移行を考えた。ここで,サービス停止時間とは,切替作業,切替作業後の動作確認及び問題発生時のサに要する時間の合計である。  B君が作成したネットワークの移行計画案を,図7に示す。
図7 ネットワークの移行計画案 拡大
図7 ネットワークの移行計画案
 ネットワーク移行のための切替えは2段階で行う。図7中の切替1と切替2について,B君は次のように考えた。 (切替1について) ・LBの設定は,切替1で全ての定義を盛り込み,その後の変更を不要にする。例えばDNS機能については,新たなネットワーク構成に必要な次のAレコードを全て設定する。  −(j)Webサーバ1とWebサーバ2に関する四つのAレコード  −(k)APが名前解決しなければならないFQDNに関するAレコード(AP内の定義には,IPアドレスではなく,FQDNを用いることにする。) ・FWのフィルタリング変更は,中間のネットワーク構成の通信に関して変更する。 ・次の点を考慮し,切替1のサービス停止時間は2時間とする。  −(l)機器の変更は,あらかじめ2通りの定義ファイルをもたせておき,定義ファイルを指定した再起動によって行う。  −約1時間,一部の利用者に情報システムを利用してもらい,(m)3種類の通信を発生させて,動作の正常性を確認する。  −(n)ドメイン登録業者に依頼する定義変更に関しては,情報システム部が正常性を確認する。利用者サービスへ直接影響しないので,その作業はサービス停止時間には含まない。 (切替2について) ・(o)FWのフィルタリング変更は,新たなネットワーク構成の通信に関して変更する。 ・機器の変更と動作の正常性確認を含めた切替2のサービス停止時間について,IP-PBXのベンダに見積りを依頼する。  B君は,検討結果をまとめ,情報システム部長に報告した。その後,顧客システムの機能拡張のプロジェクトが発足し,B君はネットワークチームのリーダとして参画することになった。

設問一覧 & 解答・演習

まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。

設問1 (1)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の ア 〜 ウ に入れる適切な字句を答えよ。
0 / 20 文字
設問1 (2)記述問題
制限字数:10 字以内
本文中の下線 (a) について,送信元 NAPT が同時に処理できる TCP コネクション数の上限を答えよ。ここで,2^16 = 65,536 である。
0 / 10 文字
設問1 (3)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の下線 (b) について,DNS 機能以外の FW の設定変更内容を二つ挙げ,それぞれ 20 字以内で答えよ。
0 / 20 文字
設問2 (1)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の下線 (c) について,現行のグローバル IP アドレスと追加するグローバル IP アドレスとの違いを 20 字以内で述べよ。
0 / 20 文字
設問2 (2)記述問題
制限字数:40 字以内
本文中の下線 (d) において,通信の行きと戻りが同じ ISP ではない場合の問題を,社外から Web サーバへのアクセスを例に,IP アドレスという用語を用いて 40 字以内で述べよ。
0 / 40 文字
設問3 (1)記述問題
制限字数:50 字以内
本文中の下線 (e) について,STUN クライアントはどのようにして NAT 機能の有無を判定するか,50 字以内で述べよ。
0 / 50 文字
設問3 (2)記述問題
制限字数:15 字以内
本文中の下線 (f) について,図 4 の通信のために,ブラウザ 2 が SDP オブジェクトに格納する二つの IP アドレス候補を,図 4 中の字句を用いて答えよ。
0 / 15 文字
設問3 (3)記述問題
制限字数:15 字以内
本文中の下線 (g) の接続先を,表 2 中の VLAN 名でそれぞれ答えよ。
0 / 15 文字
設問3 (4)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の エ , オ に入れる適切な字句を答えよ。
0 / 20 文字
設問4 (1)記述問題
制限字数:15 字以内
本文中の カ , キ に入れる適切な字句を答えよ。
0 / 15 文字
設問4 (2)記述問題
制限字数:40 字以内
本文中の下線 (h) について,マルチホーミングのために,グローバル IP アドレスをどのように割り当てるかを,40 字以内で述べよ。
0 / 40 文字
設問4 (3)記述問題
制限字数:15 字以内
本文中の下線 (i) の接続先を,表 2 中の VLAN 名でそれぞれ答えよ。
0 / 15 文字
設問4 (4)記述問題
制限字数:15 字以内
本文中の ク 〜 コ に入れる適切な字句を答えよ。
0 / 15 文字
設問5 (1)記述問題
制限字数:10 字以内
本文中の サ に入れる適切な字句を答えよ。
0 / 10 文字
設問5 (2)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の下線 (j) の四つの A レコードに記述されている,FQDN とグローバル IP アドレスの数をそれぞれ答えよ。
0 / 20 文字
設問5 (3)記述問題
制限字数:40 字以内
本文中の下線 (k) の FQDN に対応する機器名を,全て答えよ。
0 / 40 文字
設問5 (4)記述問題
制限字数:10 字以内
本文中の下線 (l) について,2 通りの定義ファイルが必要な機器名を答えよ。
0 / 10 文字
設問5 (5)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の下線 (m) の 3 種類の通信を,それぞれ 20 字以内で答えよ。
0 / 20 文字
設問5 (6)記述問題
制限字数:30 字以内
本文中の下線 (n) の確認内容を,30 字以内で述べよ。
0 / 30 文字
設問5 (7)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の下線 (o) のフィルタリング変更について,切替 2 で許可する通信を全て挙げ,図 5 中の記号(①,①',②〜④)を用いて答えよ。
0 / 20 文字
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💡 推薦ポイント:午後I・午後IIの長文ネットワーク構成事例でどこに着目してパケットの流れや設定不備を読み解くか、実践的な解法プロセスを身につけられます。
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【出題趣旨】IPA公式発表
Web コンピューティングに関する様々な技術が,開発され実用化されている。利用者が直接使う機器の多くにはWeb ブラウザが標準搭載されているので,ホームページアクセス以外の多様な用途にも使えるよう,機能強化や標準化が進められている。 本問では,Web コンピューティングにおけるリアルタイム通信を題材に,ネットワーク技術の応用力を問う。 WebRTC(Web Real-Time Communication)の特徴の一つは,Web ブラウザを使って,シグナリングとリアルタイム通信を実現できることである。これを通信プロトコルとして見た場合,応用される通信の特性が同じSIP(Session Initiation Protocol)と共通点が多い。比較的新しい技術であるWebRTC を,従来技術の知識を基に理解すること,そして,それを実システムの拡張計画へ応用することを中心に出題している。
【採点講評】IPA公式発表
問1 では,ネットワークシステムの拡張を題材に,NAT,マルチホーミング,WebRTC(Web Real-Time Communication),SIP などの技術を扱った。前半の技術検討では,比較的限定された範囲での基本的事項に関して出題したが,後半は全体を理解し考察しなければならない問題も含めた。これらの問題群を,初見,かつ,短時間で解答するのは大変だったかもしれないが,全体として,よく理解されていた。 設問2 では,マルチホーミングの一手法について問うた。(2)は基本的な問題だが,IP 層とTCP 層の動作を勘違いしたり,技術的に不正確だったりする解答が散見された。正確で簡潔な記述を心掛けてほしい。 設問3 は,WebRTC に関する設問で,Web ブラウザを使ったリアルタイム通信について問うている。(1) ,(2)は,知識がなくても本文の記述から解答できるが,(3),(4)はマルチホーミング環境でのWebRTC 利用という応用問題であり,正答率はやや低かった。正答に至らなかった受験者は,解答例を参考に復習してほしい。また,WebRTC のような比較的新しいWeb コンピューティング技術についても理解を深めてほしい。 設問4 は,WebRTC とSIP を組み合わせた設問である。(1)を除き正答率は高かった。(1)はWebsocket の知識を求めるものではなく,図6 やHTTP の一般知識からの推論を期待した設問であるが,SIP そのものに引きずられた誤答が多かった。WebRTC とSIP はシグナリングとリアルタイム通信のための通信プロトコルという点で類似性がある。これらに馴染みのない受験者には,これを機会に復習することを薦めたい。 設問5 では,これまでの検討内容を移行計画という軸から再確認している。設計と運用の両面から考える必要があるが,一つ一つはそれほど難しくはない。その中で,設計に関する(2),(7)及び運用に関する(5),(6)の正答率が低く,時間切れと思われる誤答が多かった。限られた時間で,全問に気配りすることは簡単ではないが,本問程度の量と深さには十分対応できるよう,日頃の学習や実業務での実践を積んでほしい。
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