ネットワークスペシャリスト午後I 事例記述平成27年 秋期
午後I 問2

問2 透過型負荷分散装置を用いたファイアウォールの負荷分散構成

テーマ:透過型負荷分散を用いたファイアウォールの負荷分散構成と性能・信頼性設計
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長文事例本文

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問2 ファイアウォールの負荷分散に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。  D社は,営業活動に関わる情報の共有・活用を強化するために,情報系サービス基盤を再構築することになった。新たな情報系サービス基盤には,アプリケーションサービスプロバイダのE社を利用することが決まった。E社のサービスは,インターネット上でWebサービスとして提供されている。  D社の現行のネットワーク(以下,NWという)構成を図1に示す。
図1 D社の現行のNW構成(抜粋) 拡大
図1 D社の現行のNW構成(抜粋)
〔現行NWの移行〕  D社の情報系サービス基盤再構築の概要は,次のとおりである。 ・現行NWの情報系サーバ上で稼働しているアプリケーションは,E社のグループウェアサービスに置き換える。 ・社内メールサーバと中継メールサーバは,E社の電子メールサービスに置き換える。 ・Webサーバは,現行のままとする。 ・FWでは,現行どおりレイヤ4までの動的フィルタリングを行う。 ・PCからインターネット及びDMZ上のWebサーバへの通信は,現行どおり全てProxyを経由する。  NWの移行を担当するD社情報システム部のW氏は,移行後の新NWにおけるインターネットアクセスの通信量を見積もった。その結果,インターネットとの通信量の増加によって,FWとProxyは,現状の1.4倍以上の処理能力が必要であることが判明した。そこでW氏は,FWの性能拡張策として,現行NWでのActive-Standby構成からActive-Active構成に変更する案を検討することにした。 〔FWの負荷分散〕  D社のFWには,相互に負荷分散する機能がないので,LBを使用する必要がある。W氏が現行NWのLBの仕様を調査したところ,透過モードという機能によって,FWの負荷分散が可能であることが分かった。  LBを使用したFWの負荷分散の基本構成を図2に示す。
図2 FWの負荷分散の基本構成 拡大
図2 FWの負荷分散の基本構成
 図2におけるLBの動作は次のとおりである。 (1) ①FWはセッションの終端ノードではないので,FWの負荷分散では,パケットに対して行える操作に制約があり,サーバ負荷分散で使われる仮想IPアドレスを用いる方式は使えない。そこで,図2のLBによるパケット転送の動作は,次のとおりとなる。 ・FW1,FW2のMACアドレスは,LBにあらかじめ登録してある。 ・LBは,FW宛てのイーサネットフレームに対し,宛先MACアドレスを振り分け先FWのものに書き換えて転送する。 ・その他のイーサネットフレームの転送は,ブリッジと同じ動作となる。 (2) ②LBaとLBbによるパケットの振り分けは,FWでの動的フィルタリングが正しく行われるように実行される必要がある。LBは,次のように振り分け先を管理する。 ・LBは,セッション単位で振り分け先FWを決定する。 ・セッションと振り分け先FWとの対応は,セッションの生成・消滅に合わせて動的に管理される。 〔新NW構成の設計〕  現行LBは,透過モードとサーバに対する負荷分散のモードとの併用が可能である。そこでW氏は,次の方針の下で新NW構成を設計した。 ・現行NWにFWを1台追加し,③3台構成とする。 ・現行NWのLBを,可能な限り新NWに転用する。 ・新NWにおいて,社内NWに配置するLBには,Proxyの負荷分散とFWの負荷分散とを併用させる。DMZに配置するLBには,Webサーバの負荷分散とFWの負荷分散とを併用させる。 ・新NWに必要な性能を満たすために,Proxyは台数を増設する。  W氏が設計した新NW構成案を図3に示す。
図3 新NW構成案(抜粋) 拡大
図3 新NW構成案(抜粋)
 新NW構成の設計に当たってW氏が主に検討した課題は,次の2点である。 (1) LBの転送データ量の見積り  LBの仕様には,1秒当たりの転送データ量である ア が記載されている。しかし,LBには1秒当たりの転送 イ 数に上限があるので,実際の最大 ア は転送パケット長によって変化する。そこでW氏は,インターネットのトラフィックをシミュレートして測定したLBの性能値を用いることにした。  新NWにおける通信量の見積りによる,通信区間ごとのFWの転送データ量は,表1のとおりである。また,Proxyのキャッシュ効果,及びFWでのパケット破棄を無視し,表1に基づいて計算した各LBの転送データ量は,表2のようになる。
表1 通信区間ごとのFWの転送データ量 拡大
表1 通信区間ごとのFWの転送データ量
表2 各LBの転送データ量 拡大
表2 各LBの転送データ量
 この見積りに基づいてW氏は,次のように決定した。 ・現行NWの2台のLBをLB3とLB5に転用する。 ・LB4には上位機種を新規に導入する。 (2) FWの故障対策  FWの故障対策として,LBに用意されている次の二つの機能を使用する。 ・FWの故障検出機能  ④対向するLBとの間で,経由するFWを変化させながら,相互にヘルスチェック用パケットを送受信する。 ・FWの故障発生時の影響軽減機能  現行NWのActive-Standby構成と異なり,新NWでは,FWの故障発生時にセッション ウ ができない。この影響を軽減するために,故障検出時に,⑤FWをはさんでいる両LBが,RSTフラグをオンにしたパケットをTCPコネクションの両端に送信する。  W氏が設計した新NW構成案は,プロジェクト推進会議で承認され,再構築が進められることになった。

設問一覧 & 解答・演習

まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。

設問1 [ ア ]記号・選択式
本文中の ア に入れる適切な字句を答えよ。
※直接入力してください
設問1 [ イ ]記号・選択式
本文中の イ に入れる適切な字句を答えよ。
※直接入力してください
設問1 [ ウ ]記号・選択式
本文中の ウ に入れる適切な字句を答えよ。
※直接入力してください
設問2 (1)記号・選択式
図2中の(A), (B)は、機器aと機器bとの間のTCPコネクション上のパケットを表し、矢印はその転送方向を表す。また、このTCPコネクション上のパケットはFW2を経由する。(A), (B)の宛先IPアドレスと宛先MACアドレスを、図2中の機器名を用いて答えよ。
※直接入力してください
設問2 (2)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の下線①はどのような制約か。20字以内で述べよ。
0 / 20 文字
設問2 (3)記述問題
制限字数:30 字以内
本文中の下線②では、LBaのパケット振り分け動作とLBbのパケット振り分け動作との関係について、ある条件が成立しなければならない。その条件を、30字以内で述べよ。
0 / 30 文字
設問3 (1)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の下線③で、FWを3台構成とする目的を20字以内で述べよ。
0 / 20 文字
設問3 (2)記号・選択式
表2中の [ あ ], [ い ] に入れる適切な数値を答えよ。
※直接入力してください
設問3 (3)記述問題
制限字数:30 字以内
本文中の下線④は、LBが故障検出対象であるFWに対してヘルスチェック用パケットを送信する方法と比較して、どのような利点があるか。30字以内で述べよ。
0 / 30 文字
設問3 (4)記述問題
制限字数:30 字以内
本文中の下線⑤の動作は、この動作を行わない場合と比べて、TCPコネクションの両端のノードにどのような利点を与えるか。30字以内で述べよ。
0 / 30 文字
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💡 推薦ポイント:午後I・午後IIの長文ネットワーク構成事例でどこに着目してパケットの流れや設定不備を読み解くか、実践的な解法プロセスを身につけられます。
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【出題趣旨】IPA公式発表
SaaS,PaaS などの利用が拡大しているが,これらを利用する企業ではインターネットとの通信量が格段に増加する。そのため,接続回線の増速,ファイアウォールやルータなどのネットワーク機器の性能拡張などが必要になる場合もある。また,社内のトラフィックに変化が生じることによって,改めて社内ネットワークの検証が必要となることもある。 負荷分散装置は,ネットワーク機器の性能拡張にも用いることができる。その場合は,一般に透過型負荷分散を用いる。これは,FW の他,IDS/IPS,ルータ,接続回線などの負荷分散にも応用可能であり,ネットワーク技術者として理解しておきたい技術である。 本問では,透過型負荷分散を題材として,TCP/IP の各レイヤの動作に関する理解と,性能設計,信頼性設計に関する基礎的な能力を問う。
【採点講評】IPA公式発表
問2 では,ファイアウォール(以下,FW という)に対する透過型の負荷分散を題材として,TCP/IP の各レイヤの動作,性能設計及び信頼性設計について出題した。全体として,正答率は高かった。 設問2 は,End to End の通信における,レイヤ2(データリンク層)〜レイヤ4(トランスポート層)に対する各種ネットワーク機器の動作に関する設問である。レイヤ2 を中継するブリッジの動作,レイヤ3 を中継するルータの動作,レイヤ3・レイヤ4 の情報に基づいてフィルタリングするFW の動作を正確に理解していれば,本文中の透過型LB の動作は理解できるので,透過型LB を知らなくても解答できるはずである。 設問2(1)では,四つのアドレスが全て正しい解答は少なかった。(1)を一つでも間違えた人は,ブリッジ・L2SW やルータ・L3SW の動作をよく復習してほしい。 設問3 は,信頼性設計と性能設計における,基本的な考え方や発想を問う設問であるが,(2)“い”では,本文中に示されている要件や条件を見落としたと推測される誤った解答が多く見受けられた。(社内NW)⇔(インターネット・DMZ)の通信は全てProxy を経由する,LB4 はFW 負荷分散とProxy 負荷分散を併用している,という二つの条件が念頭にあれば,図3 から,LB4 の負荷が最も高そうだ(ボトルネックになりそうだ)という見当がつくはずである。トラフィックモデルなどの要件・条件を正確に把握することは,信頼性設計・性能設計の基礎である。限られた時間で本文を丁寧に読み解き,正確に理解することを心掛けてほしい。
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平成27年 秋期 午後I(3問中2問選択・90分)を実戦演習モードで通し解答し、総合採点を受けられます。
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