ネットワークスペシャリスト午後I 事例記述令和元年 秋期
午後I 問2

問2 Webシステムの構成変更(WAFサービス導入と負荷分散装置の設計・障害対応)

テーマ:WAFサービスの導入および負荷分散装置に関するネットワーク設計・障害対応
左右2分割表示:左側の問題文をスクロールしながら右側の設問に解答できます

長文事例本文

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問2 Webシステムの構成変更に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。  A社は,中堅の菓子メーカであり,自社で製造する商品を,店舗とオンラインショップで販売している。オンラインショップの利用者は,Webブラウザを使ってWebシステムにアクセスする。A社のオンラインショップを構成する,現行のWebシステムを図1に示す。
図1 現行のWebシステム(抜粋) 拡大
図1 現行のWebシステム(抜粋)
 A社では,Webシステムのアクセス数の増加に対応するために,Webサーバの増設と負荷分散装置(以下,LBという)の導入を決めた。また,昨今,Webアプリケーションプログラム(以下,WebAPという)の脆弱性を悪用したサイバー攻撃が報告されていることから,WAF(Web Application Firewall)サービスの導入を検討することになった。そのための事前調査から設計までを情報システム部のUさんが担当することになった。 〔WAFサービス導入の検討〕  Uさんは,SaaS事業者のT社が提供するWAFサービスを調査した。T社によるWAFサービスの説明は,次のとおりである。 ・WAFサービスは,利用者のWebブラウザとWebシステム間のHTTPS通信を中継する。利用者のWebブラウザは,WAFサービスにアクセスするためのIPアドレス(以下,IP-w1という)宛てにHTTPリクエストを送信する。 ・WAFサービスは,HTTPS通信を復号してHTTPリクエストを検査する。そのために,A社は,現行と同じコモンネームのサーバ証明書と秘密鍵を,WAFサービスに提供する必要がある。 ・WAFサービスは,WebAPへのサイバー攻撃が疑われる通信を検知し,Webシステムへのアクセスを制御する。 ・WAFサービスは,アクセスを許可したHTTPリクエストの送信元IPアドレスを,HTTPヘッダのX-Forwarded-Forヘッダフィールド(以下,XFFヘッダという)に追加する。XFFヘッダへの追加後に,HTTPリクエストの送信元IPアドレスを,HTTPレスポンスがWAFサービスに送られるようにするためのIPアドレス(以下,IP-w2という)に変更する。 ・WAFサービスは,HTTPリクエストを再度HTTPSで暗号化して,WebシステムにアクセスするためのIPアドレスである199.α.β.2宛てに転送する。 ・WAFサービスは,HTTPレスポンスを検査する。HTTPレスポンスに対する処理の説明は省略する。  Uさんは,Webブラウザから送信されるHTTPリクエストを,WAFサービス宛てに変える方法について,T社に確認した。T社からの回答は,次のとおりである。 ・A社DNSサーバに,RDATAにIP-w1を設定したAレコードを登録する方式と,RDATAにT社WAFサービスのFQDNを設定したCNAMEレコードを登録する方式がある。 ・T社は,IP-w1を変更する場合があるので,①CNAMEレコードを登録する方式を推奨している。  T社からの説明を踏まえて,Uさんが検討したA社DNSサーバのゾーンファイルを,図2に示す。
図2 A社DNSサーバのゾーンファイル(抜粋) 拡大
図2 A社DNSサーバのゾーンファイル(抜粋)
 現行のWebAPでは,Webシステムへのアクセス時の送信元IPアドレスをアクセスログに記録している。Uさんは,送信元IPアドレスの代わりにXFFヘッダの情報を記録するように,WebAPの設定を変更することにした。  Uさんは,FWに設定しているWebシステムへのアクセス制御について,IP-w2を送信元とする通信だけを許可するように,設定を変更することにした。 〔LBに関する検討〕  A社が導入するLBは,HTTPリクエストの振分け機能,死活監視機能,セッション維持機能,TLSアクセラレーション機能,HTTPヘッダの編集(追加,変更,削除)機能をもっている。  HTTPリクエストの振分け機能について,Uさんは,HTTPリクエストをWebサーバに ア に振り分けるラウンドロビン方式を採用することにした。  死活監視機能について,Uさんは,WebAPの稼働状況を監視するために,レイヤ7方式を利用することにした。死活監視に用いるメッセージの設定を表1に示す。
表1 メッセージの設定(抜粋) 拡大
表1 メッセージの設定(抜粋)
 セッション維持機能には,HTTPリクエストの送信元IPアドレスに基づいて行う方式と,LBによって生成されるセッションIDに基づいて行う方式がある。セッションIDに基づいて行う方式では,WebサーバとWebブラウザ間で状態を管理するために用いられるCookieを利用する。LBは,HTTPレスポンスの エ ヘッダフィールドにセッションIDを追加する。HTTPレスポンスを受け取った利用者のWebブラウザは, エ ヘッダフィールドにあるセッションIDを,次に送信するHTTPリクエストの オ ヘッダフィールドに追加する。HTTPリクエストを受け取ったLBは, オ ヘッダフィールドのセッションIDに基づいて,セッション維持を行う。Uさんは,②WAFサービスの利用を考慮し,セッションIDに基づいて行う方式を採用した。  TLSアクセラレーション機能は,TLSの暗号化・復号処理を専用ハードウェアで高速に処理する機能である。Uさんは,TLSの暗号化・復号処理の性能向上の目的と,③LBが行うある処理のために,TLSアクセラレーション機能を利用することにした。Uさんは,LBとWebサーバ間の通信にHTTPを用い,ポート番号にHTTPのウェルノウンポート番号を用いることにした。  構成変更後のWebシステムを図3に示す。
図3 構成変更後のWebシステム(抜粋) 拡大
図3 構成変更後のWebシステム(抜粋)
〔WAFサービス停止時の対応検討〕  Uさんは,障害などでWAFサービスを1日以上利用できなくなった場合に備え,対応を検討した。WAFサービス停止期間中も,オンラインショップでの商品販売を継続させたい。Uさんは,WAFサービスを経由せずに,利用者のWebブラウザとWebシステム間で直接通信させるために,WAFサービス導入時に設定変更を予定している カ の④設定を変更することと,図2中の⑤資源レコードの1行を書き換えることで対応できると考えた。  Uさんは,WebAPのアクセスログについて,WAFサービスの有無にかかわらず,XFFヘッダの情報からWebシステムへのアクセス時の送信元IPアドレスを記録することとし,⑥LBに設定を追加した。  その後,Webシステムの構成変更に関するUさんの報告書は経営会議で承認され,導入の準備を開始した。

設問一覧 & 解答・演習

まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。

設問1記述問題
制限字数:45 字以内
本文中の下線①について,A社にとっての利点を45字以内で述べよ。
0 / 45 文字
設問2 (1) ア記述問題
制限字数:10 字以内
本文及び表1中の ア に入れる適切な字句又は数値を答えよ。
0 / 10 文字
設問2 (1) イ記述問題
制限字数:5 字以内
本文及び表1中の イ に入れる適切な字句又は数値を答えよ。
0 / 5 文字
設問2 (1) ウ記述問題
制限字数:5 字以内
本文及び表1中の ウ に入れる適切な字句又は数値を答えよ。
0 / 5 文字
設問2 (1) エ記述問題
制限字数:15 字以内
本文及び表1中の エ に入れる適切な字句又は数値を答えよ。
0 / 15 文字
設問2 (1) オ記述問題
制限字数:15 字以内
本文及び表1中の オ に入れる適切な字句又は数値を答えよ。
0 / 15 文字
設問2 (2)記述問題
制限字数:10 字以内
本文中の下線②について,送信元IPアドレスに基づいて行う方式を採用した場合に発生するおそれがある問題を,10字以内で述べよ。
0 / 10 文字
設問2 (3)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の下線③の処理の内容を,20字以内で答えよ。
0 / 20 文字
設問3 (1) [ カ ]記述問題
制限字数:10 字以内
本文中の カ に入れる機器を,図3中のDNSサーバ以外の機器名で答えよ。
0 / 10 文字
設問3 (1) 下線④記述問題
制限字数:35 字以内
本文中の下線④の変更内容を35字以内で述べよ。
0 / 35 文字
設問3 (2)記述問題
制限字数:30 字以内
本文中の下線⑤について,書換え後の資源レコードを答えよ。
0 / 30 文字
設問3 (3)記述問題
制限字数:30 字以内
本文中の下線⑥の設定内容を,30字以内で答えよ。
0 / 30 文字
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💡 推薦ポイント:午後I・午後IIの長文ネットワーク構成事例でどこに着目してパケットの流れや設定不備を読み解くか、実践的な解法プロセスを身につけられます。
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【出題趣旨】IPA公式発表
WAF(Web Application Firewall)サービスのようなSaaSで提供されるサービスを利用する企業が増えている。このようなサービスを利用する際には,利用者,オンプレミス環境及びSaaS間で行われる通信を理解し,適切に通信制御することが必要となる。 このような状況を基に,既存のWebシステムにWAFサービスを導入する事例を取り上げ,DNSを用いた通信制御について解説した。また,以前から多くのWebシステムで利用されている負荷分散装置を設計する技術力も,ネットワーク技術者には要求される。 本問では,WAFサービスの導入と障害時の対応方法を題材に,DNSの基礎知識,負荷分散装置の応用技術,オンプレミス環境とSaaSの構成におけるネットワークの導入・運用設計技術について,実務で活用できる水準かを問う。
【採点講評】IPA公式発表
問2では,WAFサービスの導入と障害時の対応方法を題材に,DNS,負荷分散装置に関する設計,オンプレミス環境とSaaSの構成におけるネットワーク設計について出題した。全体として,正答率は低かった。 設問1は,正答率が高かった。CNAMEレコードを登録すれば,WAFサービスのIPアドレスが変わったとしても,A社のゾーンファイルの変更が不要であることを是非知っておいてもらいたい。 設問2(2)は,正答率が低かった。“セッションの切断”など,セッション自体に問題が発生すると誤って解答した受験者が多かった。負荷分散装置が受信する通信の送信元IPアドレスは,WAFサービスのIPアドレスである。このような状況において,負荷分散装置が送信元IPアドレスに基づくセッション維持を行うと,特定のWebサーバに負荷が集中する問題が発生することを理解してほしい。(3)は,正答率が低かった。Cookieの利用,X-Forwarded-Forヘッダフィールドへの追加を行うためには,負荷分散装置で復号処理が必要であることを理解してほしい。 設問3(1)は正答率が高く,(2)(3)は低かった。WAFサービスのようなSaaSが停止したときの対応を,検討しておくことは重要である。状況記述を正確に読み取って正答を導き出してほしい。
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