データベーススペシャリスト午後II 総合事例記述平成29年 春期
午後II 問2

問2 販売物流業務の概念データモデリングに関するデータベース設計

テーマ:販売物流業務の概念データモデリングとスキーマ設計・統合
左右2分割表示:左側の問題文をスクロールしながら右側の設問に解答できます

長文事例本文

図表クリックで拡大
問2 販売物流業務の概念データモデリングに関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。  E社は,自動車用ケミカル製品メーカである。E社では,商品の販売物流システムを再構築することにし,業務分析の結果に基づいて概念データモデル及び関係スキーマを設計した。 〔業務分析の結果〕 1. 自社組織・得意先・商品 (1) 自社組織  E社の販売物流業務に関わる拠点には,工場,物流センタ,営業所の3種類がある。 ① 拠点の種類は拠点種類区分で分類している。拠点は拠点コードで識別し,拠点名を保持している。 ・工場は,3拠点ある。 ・物流センタは,18拠点ある。 ・営業所は,物流センタの配下に,76拠点ある。 ② 工場→物流センタ→営業所の向きに商品が流れるので,個々の拠点から見て上流を上位拠点,下流を下位拠点と呼ぶこともある。 ③ 本社には,幾つかの販売部がある。販売部と営業所を合わせて営業部門と呼び,営業部門コードで識別している。営業部門が,販売部と営業所のどちらに該当するかは,営業部門区分で分類している。 (2) 得意先  E社の得意先は,全国のカー用品店,自動車販売店,中古車店,自動車整備工場,タイヤ店,石油販売店などである。 ① 得意先は,店舗単位に登録し,得意先コードで識別している。 ② 得意先の中には,請求書の送付先を集約させるところがあり,その場合の請求書の送付先を請求得意先と呼ぶ。得意先が請求得意先に該当するか否かは,請求得意先フラグで識別する。請求得意先は,請求書を集約する対象の得意先をもつ。 ③ 得意先には,地域得意先と広域得意先があり,得意先区分で分類している。地域得意先は,店舗が1〜数店の規模のところであり,広域得意先は,店舗を全国又は複数都道府県にわたって多数展開しているところである。 ・地域得意先に対する営業は,その地域得意先を受け持つ営業所が担当する。 ・地域得意先に対する納入も,同じ営業所が担当する。 ・広域得意先に対する営業は,いずれかの販売部が担当する。 ・広域得意先に対する納入は,取扱量が大きいので,物流センタから直納する。 ④ 広域得意先の中には,全店又は東日本と西日本のようにまとめて発注してくるところがあり,このような得意先を発注得意先と呼ぶ。得意先が発注得意先に該当するか否かは,発注得意先フラグで識別する。まとめて発注される各広域得意先は,どの発注得意先から発注されるか決められている。 (3) 商品  E社の主な商品は,潤滑剤,整備用ケミカル用品,ガラス塗布剤などである。 ① 商品は,商品コードで識別する。 ② 商品には,販売期間を表す販売開始年月日・販売終了年月日,及び販売価格を設定している。 ③ 商品ごとに生産する工場を決めており,生産する工場の拠点コード,生産ロットサイズを設定している。 ④ 商品には,計画生産品と補充生産品の2種類がある。 ・計画生産品は,需要予測に基づいて計画的な生産を適用する商品である。 ・補充生産品は,下位拠点から上位拠点に対する要求に基づいて生産・補充される商品である。 2. 業務の方式 (1) 得意先への納入 ① 得意先から注文を受けると,在庫を確認し,納入指示を行う。 ② 注文に対して在庫が不足すると,得意先と調整して分納する。分納は,まず納入可能な一部数量の納入指示を行う。不足分は,在庫が補充され次第,納入指示を行う。ただし,同一の得意先からの別の注文に対してまとめて納入指示を行うことはない。 (2) 在庫保管 ① 計画生産品の在庫は,営業所及び物流センタにもたせる。 ② 補充生産品の在庫は,営業所及び物流センタの他に工場にもたせる。 (3) 在庫補充 ① 在庫には,基準在庫数量と補充ロットサイズを設定している。 ② 実在庫数量が基準在庫数量を下回った商品を対象に,1日に1回,下位拠点から上位拠点に対して商品の要求(以下,補充要求という)を行い,上位拠点から下位拠点に商品が補充される。 ③ 補充要求に対して,要求を受けた上位拠点で在庫が不足していた場合,不足した商品を当日の補充対象から外す。翌日以降に,在庫が補充要求を満たした時点で補充を行う。ただし,同一下位拠点からの,別の補充要求をまとめて補充することはない。 (4) 計画生産品の生産・物流 ① 四半期ごとに,販売目標と販売実績から向こう12か月分の需要を予測する。 ② 予測した需要と工場の生産能力から,商品別物流センタ別に,向こう12か月分の入庫数量を決め,月別商品別物流センタ別入庫計画を立てる。このとき,前の四半期の計画は最新の計画に更新する。 ③ 月別商品別物流センタ別入庫計画は,立案時に計画値を設定し,生産入庫時に実績値を累計する。 ④ 工場は,月別商品別物流センタ別入庫計画の計画値に対する実績値の割合が低い商品について,入庫先物流センタを決めて生産し,その都度,生産入庫を行う。 ⑤ 在庫補充の方式は,営業所だけに適用する。 (5) 補充生産品の生産・物流 ① 在庫補充の方式は,在庫をもつ全ての拠点に適用する。 ② 物流センタでは,生産工場別に補充要求を行う。 ③ 工場は,上位拠点がないので,補充要求の代わりに生産要求を行う。 (6) 在庫引当 ① 在庫をもつ拠点では,欠品を防止するために,在庫引当を行う。 ② 在庫引当ができた要求は,その要求分が出庫されるまで引当済数量に累積する。 3. 業務の流れ  業務の流れは,計画生産品と補充生産品で異なる。 (1) 計画生産品の業務  計画生産品の業務には,計画立案,生産,営業所補充,地域得意先納入,広域得意先直納の五つがある。各業務の流れを図1に示す。
図3 計画生産品を対象に設計した概念データモデル(未完成) 拡大
図3 計画生産品を対象に設計した概念データモデル(未完成)
① 計画立案 ・四半期ごと物流センタごとに,向こう12か月分の需要を予測する。 ・予測した需要と工場の生産能力から,月別商品別物流センタ別入庫計画を立てる。 ② 生産 ・工場は,月別商品別物流センタ別入庫計画の計画値に基づいて,入庫先物流センタを決めて,商品ごとに生産し,配送する。 ・生産では,生産年月日,生産した商品,生産数量,生産した商品の入庫先物流センタを記録する。 ・物流センタは,商品を入庫すると,月別商品別物流センタ別入庫計画の実績値を更新し,入庫の実績を記録する。 ③ 営業所補充 ・営業所は,補充が必要な場合,物流センタに対して補充要求を行う。 ・補充要求では,要求年月日,要求元の拠点,要求した商品・数量を記録する。 ・補充出庫では,出庫年月日,実際の出庫数量を記録する。 ・商品を入庫した営業所は,入庫年月日,実際の入庫数量を記録する。 ④ 地域得意先納入 ・営業所は,得意先から注文を受けると,納入指示を行う。 ・注文では,注文年月日,納入先の得意先,注文を受けた商品・数量を記録する。 ・納入指示では,納入指示年月日,納入指示数量を記録する。 ・営業所は,納入指示に基づいて納入を行い,納入の実績を記録する。 ⑤ 広域得意先直納 ・販売部は,得意先から注文を受けると,納入する物流センタを決めて納入指示を行う。 ・注文の記録は,地域得意先納入と同じである。 ・納入指示では,地域得意先納入の記録の他に,納入する物流センタを記録する。 (2) 補充生産品の業務  補充生産品の業務には,営業所補充,地域得意先納入,広域得意先直納,物流センタ補充,生産の五つがある。このうち,営業所補充,地域得意先納入,広域得意先直納は,計画生産品と同一業務なので,ここでは物流センタ補充,生産の業務の流れだけを,図2に示す。 ① 物流センタ補充 ・物流センタは,補充が必要な場合,工場に対して補充要求を行う。 ・補充要求では,要求年月日,要求元の物流センタ,要求した商品及び要求数量を記録する。 ・工場は,補充要求に対して補充出庫を行う。補充出庫では,出庫年月日,実際の出庫数量を記録する。 ・商品を入庫した物流センタは,入庫の実績を記録する。補充入庫では,入庫年月日,実際の入庫数量を記録する。 ② 生産 ・工場は,補充が必要な場合,生産要求を行う。 ・生産要求では,要求年月日,要求時刻などを記録する。 ・生産要求に基づいて生産し,生産入庫を行う。生産では,生産年月日,生産数量,生産完了時刻を記録する。生産入庫では,実際の入庫数量,入庫完了時刻などを記録する。 ・要求時刻,生産完了時刻,入庫完了時刻は,正確なリードタイムを計測するために記録するものである。 〔概念データモデルと関係スキーマの設計〕  概念データモデル及び関係スキーマの設計を,次の手順及び方針で行った。 (1) はじめに,計画生産品を対象として設計する。 ① 概念データモデルは,マスタ・在庫領域とトランザクション領域を明示して作成する。設計した概念データモデルを図3に,関係スキーマを図4に示す。 ② 認識する必要がないサブタイプは切り出さない。 (2) 次に,補充生産品を対象に設計した場合のデータ構造を検討する。 ① マスタ・在庫領域について,認識すべきサブタイプ,属性を洗い出す。 ② 図2に示した業務の範囲について,分析対象の属性を洗い出し,表1に示すエンティティタイプと属性の対応表を用いて整理する。 ③ 表1に基づいて,図5に示す補充生産品を対象に設計した場合のトランザクション領域の概念データモデルを作成する。 (3) 最後に,上記(1)と(2)で設計したエンティティタイプの共通性を評価し,概念データモデルを統合する。 ① 同じ属性で構成される場合,同一のエンティティタイプとする。 ② 共通でない属性が一方にだけ存在する場合,存在する方のエンティティタイプを他方のサブタイプとする。 ③ 共通でない属性が双方に存在する場合,共通部分をスーパタイプとし,共通でない部分をサブタイプとする。 ④ 概念データモデルを統合することで,統合前のエンティティタイプ名が不適切になることがあるので,適切なエンティティタイプ名を付与する。
図4 計画生産品を対象に設計した関係スキーマ(未完成) 拡大
図4 計画生産品を対象に設計した関係スキーマ(未完成)
表1 補充生産品を対象に設計したエンティティタイプと属性の対応表(未完成) 拡大
表1 補充生産品を対象に設計したエンティティタイプと属性の対応表(未完成)
図5 補充生産品を対象に設計したトランザクション領域の概念データモデル(未完成) 拡大
図5 補充生産品を対象に設計したトランザクション領域の概念データモデル(未完成)
解答に当たっては,次の7点に従うこと。 ① 巻頭の表記ルールに従う。ただし,エンティティタイプ間の対応関係にゼロを含むか否かの表記は必要ない。 ② エンティティタイプ間のリレーションシップとして“多対多”のリレーションシップを用いない。 ③ エンティティタイプ名及び属性名は,それぞれ意味を識別できる適切な名称とする。 ④ 関係スキーマは第3正規形の条件を満たす。 ⑤ リレーションシップが1対1の場合,意味的に後からインスタンスが発生する側に外部キー属性を配置する。 ⑥ サブタイプ固有の属性が認識可能な場合に,サブタイプを切り出す。 ⑦ サブタイプを切り出した場合,外部キーは,スーパタイプ又はサブタイプのいずれか適切なエンティティタイプに配置し,それに基づいて,リレーションシップも適切なエンティティタイプの間に引く。また,外部キー以外の従属属性についても,適切なエンティティタイプに配置する。

設問一覧 & 解答・演習

まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。

設問1 (1)記号・選択式
図3には欠落しているリレーションシップがある。マスタ・在庫領域のエンティティタイプについて,マスタ・在庫領域内及びマスタ・在庫領域とトランザクション領域間のリレーションシップを補って,図を完成させよ。
※直接入力してください
設問1 (2)記号・選択式
図4中の a 〜 k に入れる一つ又は複数の属性名を答えよ。なお, a 〜 k に入れる属性が外部キーを構成する場合,外部キーを表す破線の下線を付けること。
※直接入力してください
設問2 (1)記号・選択式
表1は,太枠で示した部分が未完成である。太枠外の例に倣って表を完成させよ。
※直接入力してください
設問2 (2)記号・選択式
図5中の欠落しているリレーションシップを補って,図を完成させよ。
※直接入力してください
設問3 (1)記号・選択式
“補充要求”,“補充要求明細”の統合後の概念データモデルを,図6に示す。また,図6に示した範囲の,統合前・統合後のエンティティタイプの対応を表2にまとめた。統合前のエンティティタイプの属性が,統合後のどのエンティティタイプの属性に対応するか,対応する全ての欄に“○”印を入れ,表を完成させよ。
※直接入力してください
設問3 (2)記号・選択式
“補充生産品生産要求”,“生産”,“生産入庫”の概念データモデルを図7に,関係スキーマを図8に示す。図8中の ア 〜 カ に入れる一つ又は複数の属性名を答えよ。なお, ア 〜 カ に入れる属性が外部キーを構成する場合,外部キーを表す破線の下線を付けること。

![図8 補充生産品生産要求,生産,生産入庫の統合後の関係スキーマ](/images/db/pm2/db-h29-pm2-q2-fig8.png)
※直接入力してください
午後II長文記述の得点力を引き上げる定番対策書Amazon・楽天 公式提携
PR
徹底攻略 データベーススペシャリスト教科書 令和8年度
IPA 厳選対策書徹底攻略 データベーススペシャリスト教科書 令和8年度株式会社わくわくスタディワールド 瀬戸 美月 著 / インプレス
DB徹底攻略
株式会社わくわくスタディワールド 瀬戸 美月 著 / インプレス

徹底攻略 データベーススペシャリスト教科書 令和8年度

💡 推薦ポイント:午後I・午後IIの概念データモデル穴埋めや排他制御・性能設計の記述問題で確実に合格点を勝ち取る実践テクニックが満載です。
※本リンク先はプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれています
【出題趣旨】IPA公式発表
概念データモデリングでは,データベースの物理的な設計とは異なり,実装上の制約に左右されずに実務の視点に基づいて,対象領域から管理対象を正しく見極め,モデル化する必要がある。また,業務内容などの実世界の情報を総合的に理解・整理し,その結果を概念データモデルに反映する能力が求められる。 本問では,自動車用ケミカル製品メーカの販売物流業務を題材に,与えられた状況から概念データモデリングを行う能力を問うものである。具体的には,①トップダウンにエンティティタイプ及びリレーションシップを見抜く能力,②ボトムアップにエンティティタイプ及び関係スキーマを分析する能力,③類似しているが異なる業務のモデルを統合する能力を評価する。
【採点講評】IPA公式発表
問2 では,自動車用ケミカル製品メーカの販売物流業務を題材に,計画生産品と補充生産品の異なる方法で行われる業務についての概念データモデル,関係スキーマ,その統合について出題した。全体として正答率は高かった。 設問1 は,正答率が高かった。ただし,概念データモデルでは,サブタイプとスーパタイプの間に存在するリレーションシップを解答できていないものが散見された。関係スキーマでは,外部キー属性について参照先のエンティティタイプを特定できていない解答が散見された。具体的なインスタンスをイメージした対応関係の理解が不足しているものと思われるので,注意深く読み取るようにしてほしい。 設問2 も正答率は高かった。ただし,概念データモデルにおいて,トランザクション間のリレーションシップを解答できていないものが散見された。連鎖する業務イベントにおいて,先行後続の関係を注意深く読み取るようにしてほしい。 設問3 の概念データモデルの統合では,統合後の関係スキーマの属性名を解答できていないものが散見されたが,注意深く状況を読めば,関係スキーマに備えるべき属性が何かは分かるはずである。 状況記述を丁寧に読み,インスタンスのレベルまで十分に考慮し,エンティティタイプ間のリレーションシップや求められる属性を検討する習慣を付けてほしい。また,対象領域全体を把握するために,全体のデータモデルを記述することは重要である。日常業務での実践の積み重ねを期待したい。
本問に関連するデータベーススペシャリスト重要用語解説
本番形式・制限時間付きで演習する
平成29年 春期 午後II(2問中1問選択・120分)を実戦演習モードで通し解答し、総合採点を受けられます。
実戦演習を始める