データベーススペシャリスト午後II 総合事例記述平成28年 春期
午後II 問2

問2 アフタサービス業務の概念データモデリングに関するデータベース設計

テーマ:アフタサービス業務における概念データモデル及び関係スキーマの設計
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長文事例本文

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問2 アフタサービス業務の概念データモデリングに関する次の記述を読んで,設問に答えよ。  E社は,太陽光発電設備メーカである。E社では,アフタサービス業務が事業立上げ時に比べて安定したので,アフタサービス業務支援システムを再構築することにし,業務分析の結果に基づいて概念データモデル及び関係スキーマを設計した。 〔業務分析の結果〕 1. 顧客・自社組織 (1) 発電プラント ① E社が販売・設置した,アフタサービスの対象の太陽光発電所である。 ② 住宅用プラントと産業用プラントの分類がある。住宅用プラントは戸建て住宅又は小規模集合住宅に設置され,産業用プラントは工場・倉庫の屋上又は未利用地に設置される。未利用地設置プラントの場合は,定期的に下草刈りをすることが多いので,下草刈り総面積を保持する。 (2) 号機 発電プラントと電力会社との接続単位である。住宅用プラントでは号機は常に一つであるが,産業用プラントでは複数の号機があることが多い。 (3) エンドユーザ 発電プラントの保有者である。複数の発電プラントをもつこともある。 (4) エリア 日本全国を分割した単位であり,幾つかの市町村をまとめた程度の大きさである。 (5) 営業所 アフタサービスを実施する拠点であり,全国に約 80 ある。複数のエリアを担当する。 (6) サービス班 サービス実施部隊であり,営業所に所属するサービス担当者(1名又は複数名)から成る。発電プラントへの出張が必要な業務には,現地調査(以下,現調という),定期点検,下草刈り,予防保全対応,修理対応,リコール対応がある。各業務内容は後述する。 (7) コールセンタ エンドユーザからの問合せの受付と,リコール対応の際の日程調整を行っている。E社に一つだけ存在する。 (8) 遠隔監視センタ 発電プラントの遠隔監視を行っている。遠隔監視の内容は後述する。E社に一つだけ存在する。 2. 品目・保守契約 (1) 品目 発電プラントの設備を構成する製品と部材の総称である。品目番号で識別する。 ① 製品は,モジュールなどの販売対象品目である。製品番号で識別する。 ② 部材は,製品の設置・接続に必要なケーブル,コネクタ,固定用具などである。部材のほとんどは複数製品に共通に用いられる。部材番号で識別する。 ③ 製品に対応する部材,及び製品一つ当たりの対応数を表にまとめ,調べられるようにしている。この表を製品部材対応という。 ④ 品目の上位の種類を品種という。モジュール,機器(直流交流変換器,分電盤など),配線類,設置部材などがある。 ⑤ 各号機を構成する品目について,品目ごとの構成数を記録している。 (2) 保守契約 発電プラントの保守はメニュー化されていて,エンドユーザは定額で保守契約を結ぶことができる。保守契約は,一つ又は複数の号機を対象に結ぶ。保守契約は,後から追加されたり解約されたりすることがある。しかし,複数の発電プラントにまたがって契約される保守契約はない。それぞれの保守契約に基づいて,次の①〜④のサービスを提供する。 ① 定期点検は,点検サイクル(毎月,3か月ごとなど)を定めて,設備が正常に稼働しているかを確認するサービスである。 ② 遠隔監視は,センサを介して得られる値を用いて設備が正常に稼働しているか,遠隔監視センタから確認するサービスである。 ③ 予防保全は,年数を経て故障が予測される部材について,設定耐用年数を超える時点,又は設定耐用年数以内であっても劣化の状態を判断して,故障前に交換するサービスである。主な対象は,露出しているケーブル,コネクタなどである。予防保全の保守契約は,定期点検の保守契約がある号機について結ぶことができる。 ④ 下草刈りは,未利用地設置プラントを対象に,定期的に下草を刈るサービスである。 3. 故障現象・リコール・リコール対応枠 (1) 故障現象 ① 繰り返し発生している故障について品質保証部門が分析し,故障概要,判定方法,修理の際の区分(有償又は無償)などを登録し,アフタサービス業務で参照できるようにしている。 ② 故障現象別に,対応に必要な品目の一覧を整備している。その一覧では,直接関連区分(当該品目が,故障の直接原因又は間接原因なのか)を有している。 (2) リコール ① リコールとは,製品及び部材に欠陥があることが判明した場合に,法令の規定又は E 社の判断で,無償修理・交換を行うことである。ある故障現象がリコールに該当すると判断した場合,リコール番号を付与してリコールとして登録する。 ② リコールごとに,リコール対応の開始年月日と完了年月日及びリコール概要を記録する。 (3) リコール対応枠 ① リコール発生時には,速やかに対応を完了させたいが,サービス班は,日常の中でリコール対応と他の業務を併せて行う必要があるので,両方の対応をバランスよく実施しなければならない。そこで,リコール登録時にリコール対応への資源配分をあらかじめ決めている。具体的には,サービス班ごとに,リコール発生後の一定期間に,対応のための時間枠(年月日・開始時刻・終了時刻)を設定する。これをリコール対応枠という。 ② リコール対応枠をあらかじめ決めておくことによって,コールセンタはエンドユーザとの日程調整で,営業所のサービス班の状況を確認する必要がなく,エンドユーザとの日程調整を円滑に進めることができる。 ③ リコール対応が完了すると,未アサインのリコール対応枠は全て解放する。リコール対応枠の状況は,枠状況区分(未アサイン・アサイン済・実施済・解放済)によって把握できる。 4. 業務の内容 (1) 問合せ ① コールセンタは,エンドユーザからの問合せ受付時に,どの発電プラントについての問合せなのかを確認して,問合せ概要を記録する。 ② 問合せが完了するまでに複数回の通話が行われることもあるが,その場合でも一つの問合せとして記録する。通話は管理対象としていない。 ③ 問合せによっては,コールセンタだけで解決できないこともある。その場合,サービス班による現調を手配し,その後のエンドユーザへの対応もサービス班に委ねる。 (2) 現調手配 現調が必要な場合,現調予定年月日時刻を決めてサービス班を手配し,手配年月日と,手配された業務との対応を記録する。 (3) 現調 サービス班が現調を実施し,現調結果概要を記録する。 (4) 定期点検 定期点検保守契約がある場合,点検時期に定期点検を行い,定期点検結果概要を記録する。 (5) 遠隔監視 ① 遠隔監視保守契約がある場合,遠隔監視センタが遠隔監視を行って,発電量,最高気温,最低気温,日射量を1日1回記録する。 ② 異常を検知した場合,遠隔監視センタは現調手配を行う。現調手配を行った後に同じ異常を検知しても,再度現調手配を行うことはない。 ③ 現調手配を行った後のエンドユーザへの対応は,サービス班に委ねる。 (6) 下草刈り 下草刈り保守契約があり,下草刈りの実施時期が到来した場合,下草刈りを実施し,作業時間を記録する。 (7) 修理対応 ① 修理が必要な場合,修理を実施し,どの業務の判断によるものか対応付ける。 ② 修理対応は,必要性を判断したサービス班が引き続き実施する。 (8) 予防保全対応 ① 予防保全保守契約があり,予防保全対応が必要と判断した場合,予防保全対応を実施し,どの業務の判断によるものか対応付ける。 ② 定期点検又は現調の機会に予防保全対応の必要性を判断する。予防保全対応だけのために現地に出張することはない。 ③ 予防保全対応は,必要性を判断したサービス班が引き続き実施する。 (9) リコール対応 ① リコールが登録されると,コールセンタがエンドユーザと日程調整を行い,対応の日時を決め,個々の発電プラントに対応するリコール対応を登録する。 ② リコール対応は,リコール対応番号で識別する。 ③ リコール対応には一つ又は複数のリコール対応枠を割り当てる。一つのリコール対応枠に複数のリコール対応を割り当てることはない。 ④ リコール対応の状況は,対応状況区分(日程調整済・対応中・対応完了)によって把握する。 (10) 対応明細の記録 ① サービス班が予防保全対応・修理対応・リコール対応の記録に用いている帳票のヘッダ部分は,それぞれの対応によって固有の様式であるが,明細部分は共通の様式であり,共通の対応明細で記録する。 ② 対応明細は,その内容によって,新たな品目を設置する対応,既存の品目を回収する対応,出張対応,作業対応に分類する。 ・新たな品目を設置した場合,設置した品目と設置数を記録する。 ・既存の品目を回収した場合,回収した品目と,品目の個体に記されている製造番号を記録する。回収した個体が複数ある場合,その件数分の対応明細を記録する。 (11) 年月日の記録 エンドユーザからの問合せ又は発電プラントへの出張が必要な業務では,開始から完了までに複数日を要する場合があり,業務の開始年月日・完了年月日を記録する。ただし,あらかじめ対応の日時を定めている業務はその限りではない。 (12) 現調・定期点検の結果の判断方法 現調・定期点検の結果の判断方法は,表1の決定表に従う。
表1 現調・定期点検の結果の判断方法の決定表(未完成) 拡大
表1 現調・定期点検の結果の判断方法の決定表(未完成)
〔概念データモデルと関係スキーマの設計〕 1. 概念データモデル及び関係スキーマの設計方針 概念データモデル及び関係スキーマの設計は,次の方針に基づいて行う。 (1) 関係スキーマは,第3正規形にする。 (2) リレーションシップが1対1の場合,意味的に後からインスタンスが発生する側に外部キー属性を配置する。 (3) 概念データモデルでは,リレーションシップについて,対応関係にゼロを含むか否かを表す“〇”又は“●”は記述しない。 (4) 認識可能なサブタイプにおいて,そのサブタイプ固有の属性がある場合,必ずそのサブタイプの属性とする。 (5) サブタイプが存在する場合,他のエンティティタイプとのリレーションシップは,スーパタイプ又はサブタイプのいずれか適切な方との間に設定する。 2. 設計した概念データモデル及び関係スキーマ 上述の設計方針に基づいて作成した,概念データモデルを図1に,関係スキーマを図2に示す。
図1 概念データモデル(未完成) 拡大
図1 概念データモデル(未完成)
図2 関係スキーマ(未完成) 拡大
図2 関係スキーマ(未完成)

設問一覧 & 解答・演習

まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。

設問 (1)記号・選択式
表1中の ア と イ に入れる適切な字句を補って,決定表を完成させよ。
【選択肢】 クリックして選択
選択中の解答:未選択(上の選択肢ボタンをクリックしてください)
設問 (2)記述問題
図1中の [ あ ] 〜 [ お ] に入れるエンティティタイプ名を答えよ。また,図1に欠落しているリレーションシップを補って,概念データモデルを完成させよ。
0 文字
設問 (3)記号・選択式
図2中の a 〜 r に入れる一つ又は複数の属性を答えよ。なお, a 〜 r に入れる属性が主キー又は外部キーを構成する属性の場合,主キーを表す実線の下線又は外部キーを表す破線の下線を付けること。ただし,既に主キーが示されている関係スキーマには,他に主キーを構成する属性はない。
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【出題趣旨】IPA公式発表
概念データモデリングでは,データベースの物理的な設計とは異なり,実装上の制約に左右されずに,実務の視点に基づいて,対象領域から管理対象を正しく見極め,モデル化する必要がある。概念データモデリングでは,業務内容などの実世界の情報を総合的に理解・整理し,その結果を概念データモデルに反映する能力が求められる。 本問では,アフタサービス業務を例として,与えられた状況記述から概念データモデリングを行う能力を問うものである。具体的には,①マスタ間の関連を見抜く能力,②リレーションシップを考察する能力,③妥当な関係スキーマを設計する能力を評価する。
【採点講評】IPA公式発表
問2 では,太陽光発電設備メーカのアフタサービス業務を題材として,決定表,概念データモデル,関係スキーマの完成について出題した。全体として正答率は標準的であった。 設問(1)では,正答率は高かったが,“対応明細を記録する”ことを解答できないものが散見された。決定表は,エンティティタイプ間のリレーションシップの妥当性を検証するツールでもあるので,条件の組合せと記録の関係を構造的に把握することに活用してほしい。 設問(2)では,当初1 対多の対応関係が,時間の経過で追加されるデータによって多対多の対応関係になることを正しく読み取れていない解答が散見された。また,トランザクションの連鎖を表すリレーションシップの誤った解答も散見された。このようなリレーションシップに関する理解は,実務上も重要なポイントとなるので,注意深く読み取るようにしてほしい。 設問(3)では,連鎖するトランザクションの後続のものほど誤った解答が散見されたが,注意深く状況を読めば,各関係スキーマに備えるべき属性が何かは分かるはずである。 状況記述を丁寧に読み,インスタンスのレベルまで十分に考慮し,エンティティタイプ間の関連や求められる属性を検討する習慣を付けてほしい。また,対象領域全体を把握するために,全体のモデル図を記述することは重要である。日常業務での実践の積み重ねを期待したい。
本問に関連するデータベーススペシャリスト重要用語解説
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