ITストラテジスト午後I 事例記述平成28年 秋期
大問 4問4 漏水検知システムの企画
テーマ:計測機器メーカにおける社会インフラ課題解決と新システム企画・市場展開
長文事例本文
問4 漏水検知システムの企画に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
F社は,各種の精密計測機器やセンサ技術に強みをもつ開発型メーカーである。近年,インフラの老朽化対策や防犯・防災に対する社会的関心が高まる中,自社の保有技術を活用した新しい社会インフラ向けシステムの企画を行っている。
〔社会インフラの課題と自社技術〕
全国の自治体が管理する上水道管・下水道管(埋設管)は,敷設後数十年が経過して老朽化が進んでおり,道路の陥没や漏水事故が頻発している。しかし,自治体の財政難や専門職員の減少に伴い,従来のような広範囲にわたる定期的な掘削点検や目視点検は困難になっている。
F社は,音響・振動センサ技術,高精度な位置測定技術,及びデータ解析技術を保有しており,これらを組み合わせることで,地上や管内から漏水音や振動の異常を早期に探知できる技術基盤を有している。
〔新システムの企画〕
F社の企画担当G氏は,自治体や水道事業者向けに,広域の埋設管の状態をリアルタイムで監視し,漏水兆候を検知する「漏水検知システム」を提案する企画書を作成した。
企画の骨子は以下のとおりである。
1. 広域監視と情報共有
埋設管に設置した振動センサからのデータをクラウド上に収集・解析し,①得られた情報は,社会インフラを管理・所管する者同士で共有できる仕組みを構築する。
2. バルブメーカとの共同開発
センサの電源確保が課題であったが,②バルブの10年ごとの定期点検に合わせバッテリを交換できるからという利点を生かし,既存の主要バルブ構造にセンサを組み込む方式を採用する。これにより,③バルブに振動センサを組み込んだ新製品を共同開発することとした。
ただし,F社はこれまで④他社が開発した機能,装置の情報を活用した事業の経験がないため,アライアンス構築や仕様調整に留意が必要である。
〔市場展開戦略〕
新システムの成功に向け,G氏は多様な市場展開策を検討している。
・グローバル展開:国内のみならず,水道インフラの老朽化に悩む海外都市へ⑤グローバルな市場への展開を狙う。
・高速道路や重機メーカとの連携:高速道路の構造物点検においては,⑥振動センサ信号の変化を基に,破壊に至る前の変化を検出する技術を活用する。また,建設重機メーカに対しては,⑦各埋設管の配置を示す3次元情報を基に自動で工事する技術との連携を提案し,工事事故防止や作業効率化を図る。
設問 & IPA公式解答例
設問1制限字数:30 字以内
〔新システムの企画〕について,クラウド上で収集・解析した漏水情報システムを構築することで得られる管理上のメリットを 30字以内で述べよ。
【IPA公式解答例】
得られた情報は,社会インフラを管理・所管する者同士で共有できる。
採点重要キーワード:得られた情報社会インフラを管理・所管する者同士共有できる
設問2 (1)制限字数:30 字以内
センサの設置場所として「バルブ」を選定した背景にある,バッテリ交換作業上の理由を 30字以内で述べよ。
【IPA公式解答例】
バルブの10年ごとの定期点検に合わせバッテリを交換できるから
採点重要キーワード:バルブの10年ごとの定期点検バッテリを交換できる
設問2 (2)制限字数:25 字以内
バルブメーカとのアライアンスにおいて,F社が提案する共同取り組みの内容を 25字以内で述べよ。
【IPA公式解答例】
バルブに振動センサを組み込んだ新製品を共同開発する。
採点重要キーワード:バルブに振動センサ組み込んだ新製品共同開発する
設問2 (3)制限字数:30 字以内
外部パートナーとのアライアンスを進める上で,F社が慎重に検討すべき自社の現状課題を 30字以内で述べよ。
【IPA公式解答例】
他社が開発した機能,装置の情報を活用した事業の経験がない。
採点重要キーワード:他社が開発した機能装置の情報を活用した事業の経験がない
設問3 (1)制限字数:15 字以内
〔市場展開戦略〕について,将来の収益拡大に向けてF社が目指す長期的な市場開拓方針を 15字以内で述べよ。
【IPA公式解答例】
グローバルな市場への展開
採点重要キーワード:グローバルな市場への展開
設問3 (2)制限字数:35 字以内
高速道路会社に対するアライアンス提案において,F社が提供する技術的強みを 35字以内で述べよ。
【IPA公式解答例】
振動センサ信号の変化を基に,破壊に至る前の変化を検出する技術
採点重要キーワード:振動センサ信号の変化破壊に至る前の変化を検出する技術
設問3 (3)制限字数:30 字以内
建設重機メーカに対する提案において,掘削事故防止のために連携する技術を 30字以内で述べよ。
【IPA公式解答例】
各埋設管の配置を示す3次元情報を基に自動で工事する技術
採点重要キーワード:各埋設管の配置を示す3次元情報を基に自動で工事する技術
【出題趣旨】IPA公式発表
IT ストラテジストには,社会の状況と自社の保有技術を基に,将来性を見込める事業を想定した新製品,新システムを企画する能力,さらにはどのような市場展開を狙うかといった戦略を立案する能力が求められる。
本問では,計測機器メーカにおける新システムの企画を題材に,社会の状況と自社の保有技術を整理する能力,それを基に新製品と新システムを企画する能力,有効なシステム化方法を検討する能力,戦略的な市場展開を企画・立案する能力を問う。
【採点講評】IPA公式発表
問4 では,漏水検知システムの企画について出題した。題意や状況設定はおおむね理解されているようであった。
設問1 では,新システムの企画について解答を求めた。正答率は高く,G 氏が行政の方針の中から何を優先し何を検討から外したかをよく理解した解答が多く見られた。
設問2(3)では,地理情報システムを活用したサービス事業の実績をもつ会社のリストアップをすることとした判断の基となるF 社の状況について解答を求めたが,F 社の状況に関連しない解答も一部に見られた。
設問3 では,新システムの様々な市場展開について解答を求めた。正答率は高かったが,高速会社と重機メーカがもつそれぞれの課題を理解できていない解答も一部に見られた。
IT ストラテジストは,社会状況,技術動向及び自社の保有技術を基に事業戦略を立て,推進する能力を高めてほしい。
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