ネットワークスペシャリスト午後I 事例記述令和7年 春期
午後I 問2
問2 ネットワークの改善(HTTPプロトコルとNAT処理能力の改善)
テーマ:学校ネットワークの改善とHTTPバージョン・NAPT処理能力の最適化
左右2分割表示:左側の問題文をスクロールしながら右側の設問に解答できます
長文事例本文
図表クリックで拡大問2 ネットワークの改善に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
私立U中学校(以下,U校という)では,600台のPCをU校のネットワークに接続してS社の教育支援サービス(以下,Eサービスという)を利用している。U校では最近校内サービスの不具合に関する申告が多くの生徒から挙がってきたので,U校は本ネットワークを設計,構築したT社に調査を依頼し,T社のVさんが担当になった。
〔U校ネットワークの概要〕
VさんはU校ネットワーク構成を確認した。U校ネットワーク構成を図1に示す。
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・ISP との接続は,最大1Gビット/秒のベストエフォート型インターネット接続サービスを契約して利用している。
・ルータはISPと接続しており,校内からインターネットへのアクセスに対し,NAPTを使って内部の a IP アドレスをISPから割り当てられた b IPアドレスに変換している。この変換情報はルータのNAT変換テーブルにNAPT変換エントリーとして格納されている。
・U校内及びISP接続のルーティングは全てスタティックルーティングである。
・APはWi-Fi 6に対応しており,各教室に1台ずつ設置されている。L2SWは,最大30Wを給電する c 機能をもち,イーサネットケーブル経由でAPに電力を供給している。
・PCは,認証サーバによってIEEE802.1X認証を行った上で,APを介してU校ネットワークに接続している。
・DHCPサーバは,U校ネットワークに接続したPCにIPアドレスやサブネットマスクなどを配布している。L3SWにはDHCPリレーエージェントが設定されており,PCから送信されたDHCPDISCOVERメッセージをDHCPサーバに中継している。①そのときにDHCPリレーエージェントは,giaddr フィールドにDHCPDISCOVERメッセージを受信したインタフェースのIPアドレスを格納している。
・全てのネットワーク機器は,syslogサーバにシステムログを送信している。
・Eサービスは,複数のサーバで構成されるクラウド型サービスである。教員及び生徒は,EサービスにPCのWebブラウザからアクセスしログインして利用している。
・1か月前から,毎朝始業直後の8:00〜8:15にEサービスの一つである自習ドリルを用いて全校生徒が一斉に学習している。
・サーバ室の動画サーバには,教職員が管理している複数の教材動画が格納されており,全校生徒が授業や自習のときにPCで視聴している。
〔不具合のヒアリングと調査〕
Vさんは,校内サービスの不具合に関する申告についてU校の教職員にヒアリングを行い,次のように整理した。
・Eサービスに対し,毎朝の自習ドリルの時間帯にアクセスすると,タイムアウト画面が出てログイン画面が表示されないと,一部かつ不特製の生徒からの申告がある。
・Eサービスに対し,毎朝の自習ドリルの時間帯にログインできたが,操作後の応答
が遅いと,複数の生徒からの申告がある。それ以外の時間帯では申告はない。
・校内の動画サーバの教材動画視聴は,時間帯や教室を問わず不具合申告はない。
②これらの結果から,Vさんは PC から E サービスにアクセスしたときの,(1)インターネット接続帯域の不足,及び(2)NAPT 処理能力の不足,の二つの仮説を立てた。
(1)インターネット接続帯域の調査
Vさんは,U校の許可を得てルータのインターネット側ポートの通信量データを収集した。インターネット通信量(ダウンロード)を図2に示す。
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図2から,実効速度が約 200 M ビット/秒で頭打ちになっていることが判明した。また,この時ルータの CPU 負荷にはまだ余裕があることも確認した。頭打ちの原因を ISP に問い合わせて調査したところ,現在の契約では構成や時間帯によって実効速度はその程度になるとのことだった。Vさんは実効速度を改善するために,インターネット接続サービスのベストエフォート型から d 型への契約変更をU校に紹介することにし,ほかの原因の調査を継続した。
(2)NAPT 処理能力の調査
Vさんは,U校の許可を得て各ネットワーク機器の状態ログ,及び syslog サーバのログを収集し,内容を確認した。ルータの NAT 変換テーブルの状態を表1に,ル
ータのシステムログを図3に示す。
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表1 から、ルータの NAPT 変換エントリーの内容には異常は見当らなかった。また、図3から、始業直後にルータの NAT 変換テーブルが枯渇していることが判明した。また、ルータの NAT 変換テーブルのエントリー数の上限は 65,536 であり、設定によって変更することが可能であった。V さんは、③ PC1 台当たりのセッション数を最大 200 と見積り、全ての PC が問題なく利用できるように、NAT 変換テーブルのエントリー数を計算してルータに設定することにした。
〔HTTP バージョンと NAPT との関係〕
V さんは、二つの仮説の調査結果をまとめて上司の W 課長へ報告した。W 課長は、その報告の NAPT 処理能力に関しては更なる注意が必要と考え、資料を提示して V さんに説明した。HTTP バージョンと NAPT との関係を図4に示す。
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図4 HTTP バージョンと NAPT との関係
次は W 課長と V さんとの会話である。
W 課長:NAPT 処理能力に着目したようですが,処理能力のほかに HTTP バージョンと NAPT 変換エントリー数との関係も意識しておく必要があると思います。
V さん:HTTP のバージョンが,NAPT 変換エントリー数と何か関係があるのですか。
W 課長:図4で説明しましょう。HTTP は長らく HTTP/1.1 が主流でしたが,Web サイトが地図などの詳細画像,動画,アニメーションなどのコンテンツから構成されるようになるにつれて,④ HoL(Head of Line)ブロッキングの問題が表面化してきました。これは一般적으로,直列処理の場合,全ての処理が完了するまでに時間が掛かるという問題です。
V さん:HTTP/1.1 では,HoL ブロッキングはどのレイヤーで発生するのですか。
W 課長:HTTP レイヤーと TCP レイヤーの両方で発生します。HTTP レイヤーでは,例えば Web ページの表示のために 10 枚の画像データをダウンロードする場合,PC からの HTTP e と,それに対するサーバからの HTTP f を一つずつ 10 回実行することになり時間が掛かるので,一般的には複数の TCP コネクションで同時にダウンロードするように実装して対処します。
V さん:HTTP/1.1 では,TCP コネクションの数が増えそうですね。
W 課長:それを抑えるために,HTTP/2 では仮想的な通信単位であるストリームの概念が導入されました。ストリームにはそれぞれ g が付与され,一つ
の TCP コネクションの中で複数のストリームを利用できるようになり,HTTP セッションの多重化と h 処理ができるようになっています。
V さん:HTTP/2 によって TCP コネクションの数も少なくて済むようですね。
W 課長:さらに HTTP/3 では,TCP の代わりに UDP を利用し,ストリームは QUIC で実現することで,TCP レイヤーの HoL ブロッキングの問題を回避しています。最近の Web ブラウザの多くは HTTP/3 を実装しているので,どの HTTP バージョンが使われるかは主に HTTP サーバ側の実装に依存すると考えられます。
V さん:つまり,TCP と UDP それぞれに対するルータの NAT 変換テーブルの管理方法の違いと,E サービスで利用可能な HTTP バージョンが分かれば,もっと改善できるということですね。
W 課長:そうです。今回のケースでは,⑤ E サービスのサーバがもし HTTP/3 に対応していれば,表 2 の保持時間を調整することで,もっと NAT 変換テーブルを有効活用できると思います。ただし,極端な値にすると別の問題が発生するので,気を付けてください。
V さん:分かりました。検討してみます。
表 2 現在のルータの NAPT 変換エントリー保持時間
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保持時間:無通信状態の NAPT 変換エントリーを保持する時間
V さんは,調査結果を U 校に報告した。その後 U 校で対策を行い,不具合は解決した。
拡大図1 U校ネットワーク構成
拡大図2 インターネット通信量(ダウンロード)
拡大表1 ルータのNAT変換テーブルの状態(抜粋)
拡大図3 ルータのシステムログ(抜粋)
拡大図4 HTTPバージョンとNAPTとの関係
拡大表2 現在のルータのNAPT変換エントリー保持時間
設問一覧 & 解答・演習
まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。
設問1 (1)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の a 〜 c に入れる適切な字句を答えよ。
0 / 20 文字
設問1 (2)記述問題
制限字数:15 字以内
本文中の下線①について、DHCPサーバは受け取ったgiaddrフィールドの情報を使って何を識別するかを、15字以内で答えよ。
0 / 15 文字
設問2 (1)記述問題
制限字数:40 字以内
本文中の下線②について、Vさんがインターネット接続帯域の不足だけではなく、NAPT処理能力の不足という仮説を立てた理由を、40字以内で答えよ。
0 / 40 文字
設問2 (2)記述問題
制限字数:15 字以内
本文中の d に入れる適切な字句を答えよ。
0 / 15 文字
設問2 (3)記号・選択式
表1について、NAPT変換エントリーを作成する際に、ルータ自身が割り当てている値を、(i)〜(v)の記号で全て答えよ。
※記号ボタンをクリックするか、直接入力してください
設問2 (4)記述問題
制限字数:20 字以内
本文中の下線③について、現状の設定で問題なく同時利用できるPC台数の上限を、整数で答えよ。また、全てのPCが問題なく同時利用するために、ルータのNAT変換テーブルのエントリー数を最低幾つ以上に設定すればよいかを、整数で答えよ。ここで、PC以外の通信は考慮しないものとする。
0 / 20 文字
設問3 (1)記述問題
制限字数:30 字以内
本文中の下線④について、全ての処理が完了するまでに時間が掛かる理由を、30字以内で答えよ。
0 / 30 文字
設問3 (2)記述問題
制限字数:25 字以内
本文中の e 〜 h に入れる適切な字句を答えよ。
0 / 25 文字
設問3 (3)記述問題
制限字数:45 字以内
本文中の下線⑤の保持時間の調整について、どの通信プロトコルをどのように変更するか、25字以内で答えよ。また、それによる効果を45字以内で答えよ。
0 / 45 文字
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【出題趣旨】IPA公式発表
【採点講評】IPA公式発表
本問に関連するネットワークスペシャリスト重要用語解説
本番形式・制限時間付きで演習する
令和7年 春期 午後I(3問中2問選択・90分)を実戦演習モードで通し解答し、総合採点を受けられます。