データベーススペシャリスト午後II 総合事例記述平成30年 春期
午後II 問2

問2 受注,製造指図,発注,入荷業務の概念データモデリングに関するデータベース設計・実装

テーマ:製菓ラインメーカにおける受注・製造指図・発注・入荷業務の概念データモデリング及び関係スキーマの設計
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問2 受注,製造指図,発注,入荷業務の概念データモデリングに関する次の記述を読んで,設問に答えよ。  E社は,製菓ラインのメーカである。E社では,システムを再構築することになり,業務分析の結果に基づいて概念データモデル及び関係スキーマを設計した。 〔業務分析の結果〕 1. 業務の全体像 (1) 製菓ラインを稼働させるために必要なユニット,すり合せ部品,ソフトウェア,及びユニットの設置・試運転を設計,調達,製造し,提供している。  ① ユニットとは,製菓ラインにおける主要な設備のことであり,混合ユニット,成型ユニット,焼成ユニットなどがある。自社で設計・製造するユニットのことを内製ユニットといい,他社から仕入れるユニットのことを購買ユニットという。  ② すり合せ部品とは,ユニットを工場に設置する際に,ユニット同士の接続,及び工場の建屋・既存設備とユニットの接続に使用される部品のことである。  ③ ソフトウェアとは,製菓ライン全体をコントロールするプログラムのことである。 (2) ユニットを構成する部品(以下,構成部品という)は,全て他社から仕入れている。構成部品を幾つか組み合わせたものを,中間仕掛品という。 2. 自社の組織 (1) 部門は,部門コードで識別する。部門は階層構造であり,下位の部門は上位の一つの部門に所属する。 (2) 社員は,社員コードで識別する。社員は一つの部門に所属する。 3. 取引先 (1) 取引先とは,E社の取引相手である。 (2) 取引先は,取引先コードで識別し,取引先名,取引先住所などを記録する。取引先の単位は,取引先企業の中の取引を行う部門の単位である。 (3) 取引先には,販売相手の得意先と,購買相手の仕入先がある。取引先が得意先と仕入先のどちらに該当するかは,取引先区分で分類している。得意先と仕入先の両方に該当する取引先は存在しない。 (4) 得意先には,契約先と出荷先がある。契約先とは,販売に関して契約を交わす部門であり,出荷先とは,販売した製菓ラインを納める部門である。契約先は契約先フラグで識別し,出荷先は出荷先フラグで識別する。一つの得意先が契約先と出荷先を兼ねることもある。 4. 品目・在庫 (1) 品目  ① 品目とは,E社が提供する製品及びサービスのことであり,品目コードで識別する。品目には,全体設計,ユニット,中間仕掛品,構成部品,すり合せ部品,ソフトウェア,設置・試運転がある。  ② 品目には,受注品目(得意先から受注する品目),投入品目(製造に必要な品目),製造品目(自社で製造する品目),発注品目(仕入先に発注する品目)がある。  ③ 製造品目ごとに,どの投入品目が幾つ必要なのかをまとめたものを,品目構成という。  ④ 発注品目ごとに,仕入先が一つ決まっている。 (2) 在庫  ① 投入品目である中間仕掛品と構成部品は在庫をもつ。  ② 在庫は,品目コードごとに,実在庫数量,引当済在庫数量,利用可能在庫数量,発注済未入荷数量を記録する。引当とは,品目の利用予約のことである。 5. 業務の内容 (1) 商談  ① 技術営業社員は,契約先から引合を受け,商談を行う。  ② 商談は,商談#(以下,#を番号の意味で用いる)で識別し,案件名,案件内容,商談年月日,商談相手の契約先,商談を担当する技術営業社員を記録する。 (2) 受注  ① 商談の結果,契約先から注文があった場合に受注となる。受注を担当するのは,商談を担当した技術営業社員である。1件の商談で複数の受注が発生することもある。  ② 受注に当たって,商談段階から行っていた全体設計を確定し,必要なユニット,すり合せ部品,ソフトウェア,設置・試運転を明確にする。  ・ユニットについては,品目として登録されていなければ登録する。  ・全体設計,すり合せ部品,設置・試運転については,受注ごとに固有なので,この時点で品目として登録する。  ・ソフトウェアについては,詳細仕様が異なっていても基本仕様が同じであれば,同じ品目とみなす。品目として登録されていなければ登録する。  ③ 受注は,受注#で識別し,出荷先,受注年月日を記録する。また,どの商談に対する受注かが分かるように商談#を記録する。  ④ 受注細は,受注#と受注明細#で識別し,受注品目コード,受注数量,受注単価,受注金額,出荷予定年月日,納入予定年月日を記録する。  ⑤ 受注細には,次の分類がある。  ・全体設計受注明細  ・ユニット受注明細  ・すり合せ部品受注明細  ・ソフトウェア受注明細  ・設置・試運転受注明細  (i) 全体設計受注明細には,全体設計内容を記録する。  (ii) ユニット受注明細には,ユニットが製菓ラインの何番目で使われるのかを表す工程順を記録する。内製ユニットの場合は受注明細を基に製造を指図する。購買ユニットの場合は仕入先に発注する。  (iii) すり合せ部品受注明細には,すり合せ箇所(すり合せ部品が利用される箇所)を記録しておく。  ・すり合せ部品の設計は,受注を担当した技術営業社員が行う。  ・すり合せ部品設計は,設計#で識別する。すり合せ部品受注明細ごとに,設計#を一つ割り振る。  ・すり合せ部品設計には,汎用品を使うか専用品が必要かを区別する専汎区分を記録する。汎用すり合せ部品を使う場合は仕入先に発注し,専用すり合せ部品が必要な場合は製造を指図する。  (iv) ソフトウェア受注明細には,詳細仕様を記録する。同じ品目であっても,製造部門の要員状況に応じて,製造を指図するか,仕入先に発注するかを決める。  (v) 設置・試運転受注明細には,開始予定年月日,終了予定年月日を記録しておく。  ・設置・試運転受注明細を基に設置・試運転指示を行う。複数の指示に分かれることもある。  ・設置・試運転指示は,設置・試運転指示#で識別し,指示年月日を記録する。 (3) 所要量展開  所要量展開とは,製造品目に必要な投入品目とその数量を,品目構成に基づいて求めることである。所要量展開は次のように行う。  ① 内製ユニットに必要な中間仕掛品及び直下の構成部品とその数量を求め,在庫があればある分だけ引き当てる。  ② 中間仕掛品の在庫が不足する場合,中間仕掛品を製造する必要があるので,中間仕掛品に必要な構成部品とその数量を求め,在庫があればある分だけ引き当てる。  ③ 所要量展開の結果は,受注#,受注明細#,所要量明細#の組合せで識別し,必要品目,必要数量,引当済数量を記録する。  ④ 在庫引当後,中間仕掛品が不足する場合には,後述する製造指図を行い,構成部品が不足する場合には,後述する発注を行う。  ⑤ ユニット受注と引当結果の判断は,表1の決定表に従って行う。
表1 ユニット受注と引当結果の判断の決定表(未完成) 拡大
表1 ユニット受注と引当結果の判断の決定表(未完成)
(4) 製造指図  ① 何を,幾つ製造するかを指図する。製造指図は製造#で識別し,製造指図年月日を記録する。  ② 製造指図には,次の分類がある。  ・ユニット製造指図  ・すり合せ部品製造指図  ・ソフトウェア製造指図  ・中間仕掛品見込製造指図  ・中間仕掛品製造指図  (i) ユニット製造指図は,受注明細の受注数量がそのまま製造指図数量となる。  (ii) すり合せ部品製造指図は,受注明細の受注数量がそのまま製造指図数量となる。どのすり合せ部品設計に基づくのかの設計#を記録する。  (iii) ソフトウェア製造指図は,受注明細の受注数量がそのまま製造指図数量となる。納品方法を記録する。  (iv) 中間仕掛品について,“製造リードタイムが長い”,“構成部品の発注ロットサイズが大きい”などの条件に該当する場合,製造部門の判断で製造を指図し,在庫をもつ場合がある。これを中間仕掛品見込製造指図と呼ぶ。製造部門が,製造する品目,製造指図数量,優先度を決定し,記録する。  (v) 中間仕掛品製造指図は,1日分の所要量展開の結果を基に行い,対象の所要量展開の結果に同じ品目が複数件ある場合には,1件の製造指図にまとめる。品目,製造指図数量を記録する。所要量展開には,どの製造指図にまとめられたかの製造#を記録する。 (5) 発注  ① 仕入先に対して,発注品目を発注する。発注は発注#で識別し,発注年月日を記録する。  ② 発注には,次の分類がある。  ・ユニット発注  ・すり合せ部品発注  ・ソフトウェア発注  ・構成部品定量発注  ・構成部品都度発注  (i) ユニット発注は,受注明細の受注数量がそのまま発注数量となる。仕入先から出荷先に,直接納入するかどうかの直納区分を記録する。  (ii) すり合せ部品発注は,受注明細の受注数量を基に発注ロットサイズを加味して,発注数量を決定する。どのすり合せ部品設計に基づくのかの設計#を記録する。  (iii) ソフトウェア発注は,受注明細の受注数量がそのまま発注数量となる。瑕疵(かし)担保期間を記録する。  (iv) 一定量の在庫をもつ方針の構成部品については,構成部品定量発注を行う。品目ごとの実在庫数量が発注点を下回ったときに,定められた数量を発注する。品目,発注数量,発注時在庫数量を記録する。  (v) 一定量の在庫をもたず,都度発注する方針の構成部品については,構成部品都度発注を行う。1日分の所要量展開の結果を基に発注ロットサイズを加味して,発注数量を決定する。対象となる所要量展開に同じ品目が複数件ある場合は,1件にまとめて発注する。品目,発注数量,希望納入年月日を記録する。所要量展開には,どの発注にまとめられたかの発注#を記録する。 (6) 入荷  ① 発注に基づいて,仕入先から品目が入荷される。入荷は,入荷#で識別し,入荷年月日,入荷数量,どの発注に該当する入荷であるかを記録する。  ② 1件の発注において,仕入先の在庫不足などで,数量の一部だけが入荷され,入荷が分割される場合がある。ただし,複数の発注が1件の入荷にまとめられることはない。 〔概念データモデルと関係スキーマの設計〕 1. 概念データモデル及び関係スキーマの設計方針  概念データモデル及び関係スキーマの設計は,次の方針に基づいて行う。 (1) 関係スキーマは,第3正規形にする。 (2) リレーションシップが1対1の場合,意味的に後からインスタンスが発生する側に外部キー属性を配置する。 (3) 概念データモデルでは,リレーションシップについて,対応関係にゼロを含むか否かを表す“○”又は“●”は記述しない。 (4) 認識可能なサブタイプにおいて,そのサブタイプ固有の属性がある場合,必ずそのサブタイプの属性とする。 (5) 受注明細,製造指図,発注については,サブタイプを認識し,サブタイプ間のリレーションシップを明確にする。 (6) サブタイプが存在する場合,他のエンティティタイプとのリレーションシップは,スーパタイプ又はサブタイプのいずれか適切な方との間に設定する。 (7) 関係スキーマは,概念データモデルで認識したサブタイプを含めたエンティティタイプごとに設計する。 2. 設計した概念データモデル及び関係スキーマ  設計に当たり,品目のサブタイプを整理するために,各品目とサブタイプの対応関係を表2にまとめた。
表2 各品目とサブタイプの対応関係(未完成) 拡大
表2 各品目とサブタイプの対応関係(未完成)
 概念データモデル及び関係スキーマの設計方針に基づいて作成した,概念データモデルを図1に,関係スキーマを図2に示す。
図1 概念データモデル(未完成) 拡大
図1 概念データモデル(未完成)
図2 関係スキーマ(未完成) 拡大
図2 関係スキーマ(未完成)

設問一覧 & 解答・演習

まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。

設問 (1)記号・選択式
表1中の ア, イ に適切な字句を入れて,表を完成させよ。
【選択肢】 クリックして選択
選択中の解答:未選択(上の選択肢ボタンをクリックしてください)
設問 (2)記号・選択式
表2中の,太枠内は未完成である。太枠内について,各品目が対応するサブタイプの欄に“○”印を入れて,表を完成させよ。
※直接入力してください
設問 (3)記述問題
図1中の [ あ ] 〜 [ う ] に入れるエンティティタイプ名を答えよ。また,図1中で欠落している,リレーションシップ及び発注のサブタイプを補って,概念データモデルを完成させよ。
0 文字
設問 (4)記述問題
図2中の a 〜 r に適切な一つ又は複数の属性名を入れ,更に図2中の下部の空白部分に,図1中で欠落している発注のサブタイプの関係スキーマを追加して,図を完成させよ。属性が主キーを表す場合は実線の下線を,外部キーを表す場合は破線の下線を付けること。なお,答案用紙の欄は全て埋まるとは限らない。
0 文字
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【出題趣旨】IPA公式発表
概念データモデリングでは,データベースの物理的な設計とは異なり,実装上の制約に左右されずに実務の視点に基づいて,対象領域から管理対象を正しく見極め,モデル化する必要がある。概念データモデリングでは,業務内容などの実世界の情報を総合的に理解・整理し,その結果を概念データモデルに反映する能力が求められる。 本問では,製菓ラインのメーカを例として,与えられた状況から概念データモデリングを行う能力を問うものである。具体的には,①トップダウン的にエンティティタイプ及びリレーションシップを見抜く能力,②ボトムアップにエンティティタイプ及び関係スキーマを分析する能力,③サブタイプを分析する能力を評価する。
【採点講評】IPA公式発表
問2 では,製菓ラインメーカの受注,製造指図,発注,入荷業務を題材に,決定表,サブタイプの整理,概念データモデル,関係スキーマについて出題した。全体として,正答率は高かった。 (1)は,正答率が高かった。出題対象の業務はやや複雑であったが,問題文をよく読んで,業務を整理できた受験者が多かった。 (2)は,正答率が低かった。表形式でサブタイプを整理することで,サブタイプ間の関係が明確になり,正確な概念データモデルを作成できるようになる。 (3)のエンティティタイプ名の穴埋めは,正答率が高かった。一方で,概念データモデルの作成については,特に得意先,品目,発注のサブタイプ部分の正答率が低かった。サブタイプ間の関係が排他であるのか,共存であるのかを意識することを心掛けてほしい。 (4)は,マスタ部分の関係スキーマは正答率が高かったが,トランザクション部分の正答率が低かった。 関係スキーマは正答できているが,該当する部分の概念データモデルが正答できていないという受験者が散見された。主キーと外部キーの関係を正確に理解できていないために,正しいリレーションシップを引けなかったものと思われる。外部キーがどの主キーを参照しているのかを意識する習慣をつけてほしい。
本問に関連するデータベーススペシャリスト重要用語解説
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