システムアーキテクト午後I 事例記述平成28年 秋期
午後I 問2

問2 問合せ管理システムの導入について

テーマ:情報システムの新規導入の場合には,様々な利害関係者からの要望,制約条件などを収集し,種々の要求に 対して適切な解決策が求められることが多い。
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長文事例本文

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問2 問合せ管理システムの導入に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。  D社は,産業用機械メーカである。全国にあるグループの販売会社数社を通じて,法人顧客に対してD社製品の販売・保守を行っている。D社グループでは,製品に関する顧客からの不具合の連絡,クレームなどを含む問合せ(以下,問合せという)をグループ全体で一元的に管理する問合せ管理システム(以下,新システムという)の導入を行うことにした。 〔新システム導入の目的〕  顧客からの問合せは,販売会社で受け付け,対応しており,受付内容及び対応内容の情報(以下,問合せ情報という)については,各販売会社で記録,管理している。しかし,現在は問合せへの対応状況が適切に管理されておらず,一部の対応が滞ることがある。また,問合せ情報をD社グループ内で共有できておらず,過去の対応内容を類似の問合せへの対応に生かすことができていない。製品製造元であるD社においても,問合せ情報が即時に販売会社から報告されていないので,問合せが急増している製品を早期に把握し,改善を図ることができていない。  そこで,D社グループ内で新システムを構築し,顧客サービスの向上と製品の品質改善につなげることにした。新システムは1年後に稼働する計画とした。 〔現在の問合せ対応業務の概要〕  現在の,各販売会社で行う問合せ対応業務の概要は,次のとおりである。 (1) 顧客は,購入したD社製品に問題が発生した場合,販売会社へ電話又は電子メール(以下,メールという)で連絡する。 (2) 連絡を受けた担当者は,顧客から問合せ内容の詳細を聞取りする。 (3) 担当者は,即時に解決可能な問合せの場合,聞取りと同時に解決に必要な対応を行う。即時に解決できない問合せの場合,一旦聞取りを終了し,販売会社内の製品技術者又はD社の製品部門に連絡して,対応策を相談する。相談した対応策に基づき,再度顧客に連絡し,解決に必要な対応を行う。 (4) 対応が完了した後,担当者は各販売会社所定の報告書を作成し,上司に報告する。報告書は,各販売会社の文書管理規程にのっとって管理する。  なお,解決困難な問合せの場合は,問合せ内容の聞取り終了から報告までに数週間掛かる場合がある。また,安全性に関わる重大な問題の場合は,品質問題報告書を作成し,聞取り終了した日の翌営業日までに,D社品質保証部門に報告している。 〔D社グループのIT戦略〕  5年前に策定したD社グループのIT戦略では,グループ全体の経営を支える情報システムの最適化を目標として定め,社内LAN及びグループウェアを含む社内イントラネットシステムの統合を実現した。統合の際,ディレクトリサーバを用いたID管理基盤を導入し,それまで情報システムごとに個別管理していた利用者ID及びパスワードを一元管理している。また,多様な働き方に対応するために,社員に貸与するPCを利用して,自宅,外出先などから,インターネットVPN経由で社内システムへ安全にアクセスできる環境を構築した。当環境では,個人所有のPCなど,許可されていない端末からはアクセスできない対策が取られている。  現在,新システムとは別に,D社グループ全体で基幹業務システムの再構築プロジェクトが進行しており,1年半後に新たな基幹業務システムの稼働を予定している。  なお,D社では今年,IT戦略の見直しを行った。見直し後のIT戦略では,更なる経営効率向上を目指し,自社で構築・運用する情報システム(以下,自社運用システムという)を段階的に減らし,専門の事業者が提供するクラウドコンピューティングサービス(以下,クラウドサービスという)の活用を積極的に進めることにした。 〔販売会社からの新システムへの要望〕  販売会社からの新システムへの要望は次のとおりである。 ・問合せ対応の参考にするために,他の販売会社で受け付け,対応が完了した問合せ情報についても,製品型番,製品名,問合せ分類,フリーワード,受付年月日の期間指定などで検索することで,問合せ件名などの基本情報,受付内容及び対応内容を閲覧できるようにしてほしい。一方で,その他の情報については,必要がない限り問合せ受付元の販売会社以外には閲覧させないことを原則としてほしい。 ・自社で登録した問合せ情報は,登録後も自社で修正できるようにしてほしい。一方で,自社で登録した問合せ情報を,他の販売会社が修正できないようにしてほしい。 ・誤って同一の問合せを重複して登録することが想定されるので,自社で登録した問合せ情報を削除できるようにしてほしい。一方で,自社で登録した問合せ情報を,D社及び他の販売会社が削除できないようにしてほしい。 ・担当者が問合せを受けた時に聞取りした相手である顧客側の担当者(以下,問合せ顧客という)の情報については,機密性が高いので,D社及び他の販売会社へ開示しないでほしい。D社が問合せ顧客の情報を必要とする場合は,担当者に連絡をもらえれば,問合せ顧客に了解を得た上で,情報を伝えるようにする。 ・新たに,利用者ID及びパスワードを覚えなくても済むようにしてほしい。 〔D社品質保証部門及び製品部門からの新システムへの要望〕  D社品質保証部門及び製品部門からの新システムへの要望は次のとおりである。 ・販売会社からの要望に加えて,D社としては製品の品質改善のために,重大な問題に限らず,早期に問合せ情報を確認できるようにしてほしい。具体的には,どのような問題が発生しているのかを把握するために,問合せ件名,受付内容及び報告時点までの対応経緯だけでも直ちに確認できるようにしてほしい。問合せ内容,対応経緯などの修正が後から生じることは問題ない。 ・受付内容の記入間違い時の訂正,D社が支援した内容の対応経緯への加筆などが想定されるので,販売会社が登録した受付内容及び対応内容を,販売会社が対応中でも対応が完了した後でも,D社が修正できるようにしてほしい。 ・複雑な問題の場合,D社が直接顧客から問合せの詳細を聞取りしたいことがあるので,必要な情報を見られるようにしてほしい。 ・製品マスタなどのマスタ情報は,基幹業務システム上で更新が発生するので,新システム上にも最新情報を反映するようにしてほしい。 〔新システムの構成〕  IT戦略に基づき,新システムは,クラウドサービスを活用して構築することを検討した。検討の中で,クラウドサービス上に構築する新システムを,社内LAN経由ではなくインターネット経由で直接利用した場合のリスクとして,外部からの不正アクセス,盗聴の他,社内システムでは認めていないシステムの利用方式で社員が新システムを利用できてしまうおそれがあるのではないかという意見が挙がった。  これらのリスクに対して,クラウドサービスと自社運用システムとの間を閉域網で接続し,インターネットから論理的に遮断して社内LAN経由でしか新システムを利用できない構成とすることによって,リスクを回避することにした。  検討した新システムの構成概要を図1に示す。
図1 新システムの構成概要 拡大
図1 新システムの構成概要
 新システムへの要望に基づき,新システムで構築するディレクトリサーバと自社運用システム上のディレクトリサーバとの連携,及び新システムで開発する業務アプリケーションプログラムと基幹業務システムの業務アプリケーションプログラムとの連携が必要になる。しかし,基幹業務システムとの連携は,基幹業務システム側での対応作業の負荷が高いことに加え,①ある理由で新システム稼働後の改修が発生する可能性が高いので,今回はディレクトリサーバの連携だけを行うことにした。基幹業務システムとの連携は新システム稼働後に改めて検討することにし,当面は人手での情報連携で運用することにした。 〔登録画面の設計〕  新システムで管理する問合せ情報は,五つに分類し,その情報の種類ごとに画面領域を分割して問合せ情報を登録する画面(以下,登録画面という)を設計した。情報の種類ごとの主な属性を,表1に示す。
表1 情報の種類ごとの主な属性 拡大
表1 情報の種類ごとの主な属性
 基本情報の対応ステータスは,問合せへの対応状況に応じて“受付内容確認中”,“受付完了・対応中”,“対応完了”の三つのステータスの中から選択し,新システムに登録,更新することによって,問合せ対応の進捗状況を可視化できるようにした。  新システムへの要望を踏まえて,対応ステータスを“受付完了・対応中”にすることによって,D社品質保証部門及び製品部門に必要な権限を与えるようにした。また,“対応完了”にすることによって,D社品質保証部門及び製品部門に加えて,問合せ受付元以外の販売会社にも必要な権限を与えるようにした。  なお,②新システムを利用した問合せ対応業務では,即時に解決できない問合せの場合であっても,遅くとも業務上のあるタイミングまでには,問合せ情報を新システムに登録するルールとした。 〔問合せ情報に対する権限〕  問合せ受付元の販売会社が登録した問合せ情報を利用するに当たっての,利用者の所属,基本情報の対応ステータス及び情報の種類に応じた,閲覧,修正及び削除の権限を,表2の決定表に整理した。
表2 登録された問合せ情報を利用するに当たっての権限の決定表 拡大
表2 登録された問合せ情報を利用するに当たっての権限の決定表

設問一覧 & 解答・演習

まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。

設問1(1)記述問題
制限字数:30 字以内
〔新システムの構成〕について,リスクとして挙げられた,社内システムでは認めていないシステムの利用方式を,30字以内で述べよ。
0 / 30 文字
設問1(2)記述問題
制限字数:25 字以内
〔新システムの構成〕について,新システムで構築するディレクトリサーバと自社運用システム上のディレクトリサーバを連携させることによって,新システムで何が利用できるようになるか。25字以内で述べよ。
0 / 25 文字
設問1(3)記述問題
制限字数:40 字以内
〔新システムの構成〕について,本文中の下線①について,どのような理由で,新システム稼働後の改修が発生する可能性が高いと判断したのか。40字以内で述べよ。
0 / 40 文字
設問2記述問題
制限字数:25 字以内
〔登録画面の設計〕について,本文中の下線②の業務上のあるタイミングとは,どのようなタイミングか。25字以内で述べよ。また,そのときに,登録画面の対応ステータスで選択すべきステータスは何か。そのステータスを答えよ。
0 / 25 文字
設問3(1)記号・選択式
〔問合せ情報に対する権限〕について,表2中の a 〜 g に入れる適切な字句を,解答群の中から選び,記号で答えよ。なお,a 〜 g には同じ字句が入ることもある。
※記号ボタンをクリックするか、直接入力してください
設問3(2)記述問題
制限字数:40 字以内
〔問合せ情報に対する権限〕について,D社品質保証部門及び製品部門から,問合せ情報の担当者を閲覧可能とした理由を,40字以内で述べよ。
0 / 40 文字
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【出題趣旨】IPA公式発表
情報システムの新規導入の場合には,様々な利害関係者からの要望,制約条件などを収集し,種々の要求に 対して適切な解決策が求められることが多い。 本問では,グループ会社における問合せ管理システムの導入を題材として,利害関係者から収集した要望, 制約条件などを分析してシステム要件へ整理すること,グループ全体のIT 戦略との適合性を見極めてシステ ム構成を設計することなどについて,具体的な記述を求めている。利害関係者からの要求を正しく理解し,求 められている情報システムを設計する能力を問う。
【採点講評】IPA公式発表
問2 では,問合せ管理システムの導入を例にとり,システム構成の設計や権限の定義について出題した。 設問1(3)では,新システムの導入と基幹業務システムの再構築の時期が重複することによる影響を問うた が,基幹業務システムの再構築のことだけが記述されている解答が散見された。 設問2 では,D 社の要望に基づく登録のタイミングを問うたが,対応策を相談するタイミングやD 社品質保 証部門に報告するタイミングといった誤った解答が散見された。 設問3(1)は,全体として正答率が高かったが,e は誤った解答が多く見られた。表2 に表記されている,利 用者の所属がD 社品質保証部門又は製品部門の場合の“担当者”の情報に対する権限と同じものを誤って選択 しており,問題文をよく読めば防ぐことができた誤りだった。 設問3(2)では,販売会社及びD 社の両者の要望を踏まえた解答を期待したが,いずれか一方の要望しか記述 されていない解答が多かった。 システムアーキテクトとして,複数のステークホルダの要望を十分に理解した上で,整合性の取れた適切な 情報システムの設計が行えるように心掛けてほしい。
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