システムアーキテクト午後I 事例記述平成27年 秋期
午後I 問2

問2 業務及びシステムの移行について

テーマ:業務の効率向上,保守の容易化を狙って,全社のシステムを一括して移行することが多くなってきた。
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長文事例本文

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問2 業務及びシステムの移行に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。  B社は,飲料製造会社M社の地域別販売会社であり,自動販売機(以下,自販機という)での小売販売だけを行っている。B社では,業務の効率向上のために,現在使用している自販機販売管理システム(以下,現行システムという)から,M社が地域別販売会社向けに提供している自販機販売管理システム(以下,新システムという)に移行することになった。 〔B社の業務の概要〕 (1) B社は,本社と150か所の営業所を有する。各営業所には倉庫がある。営業所は近隣の営業所とグループを構成しており,この単位を営業所グループという。 (2) 自販機はB社の資産であり,法人や個人の敷地に設置させてもらい,売上の数%を手数料としてその設置先(以下,自販機設置先という)に支払う。 (3) 商品別販売予測業務:営業所では,週初に,個々の自販機について1週間分の商品別販売予測を行う。倉庫の容量の制約から,注文は毎日,翌日配送分だけ行う。 (4) 商品注文業務:営業所では,毎朝,商品の注文を入力する。入力した注文は,本社に集約され,毎日1回,本社からM社に発注される。このとき発注した商品は,発注の翌日夕方に,M社から各営業所の倉庫に直接配送される。商品は全てM社の製品である。 (5) 在庫管理業務:倉庫の在庫管理は,各営業所で行う。在庫管理業務の一環として,同じ営業所グループの他の営業所から商品を融通してもらうことがある。 (6) 巡回業務・売上金回収業務・売上計上業務・商品補充業務:営業員は,巡回予定に従って,担当する自販機を毎日巡回し,自販機の売上金回収,売上計上,並びに商品の補充数の計算及び補充を行う。 (7) 手数料支払業務:営業所では,自販機設置先への手数料支払を行う。締日は,自販機設置先ごとに異なるが,20日又は月末が多い。手数料支払業務では,手数料計算,手数料計算書作成・送付,振込みを行う。手数料計算書には,商品別の売上単価,本数,売上額,手数料などの明細を記載する。 〔B社の現行システムの概要〕 (1) サーバの構成:現行システムは,本社と各営業所にサーバが設置されている分散型のクライアントサーバシステムであり,本社システム,営業所システムから成る。 (2) システムの機能:本社システムは,全社の在庫管理,会計,発注及び販売管理の機能をもつ。営業所システムは,営業所ごとに行う在庫管理,注文,販売及び手数料計算の機能をもつ。営業所システムは,そのシステムが管理する営業所の情報に加え,本社システムからマスタや他営業所の情報を受け取って動作する。営業所システムを社外で利用する際には,携帯型の端末であるハンディターミナル(以下,HTという)を使用する。 (3) HTと自販機の連携:HTは,売上金回収登録,売上計上及び商品補充登録の機能をもつ。営業員は自販機から売上金を回収し,HTを自販機と通信させ,売上額をHTに入力して,売上計上処理を行う。さらに,自販機から収集した売上情報を基にHTが算出した補充数だけ,商品を補充する。自販機が保持している売上情報は,HTと一度通信するとクリアされる。 (4) HTとサーバの連携:営業員は,帰社後,HTを営業所システムと通信させ,営業所サーバ上のデータを更新する。営業員全員がデータを更新した後,集計,在庫評価などの日次処理を行う。 (5) 商品の注文タイミング:営業所システムに入力された商品の注文データは,朝1回,本社システムに一括転送され,本社は注文データを集約し,朝10時にM社に発注する。 (6) 在庫,手数料計算:営業所の在庫,売上及び手数料のデータは,営業所の日次処理後に本社システムに一括転送される。全社の集計処理は,本社システムにおいてバッチ処理で行う。営業所の手数料計算処理は任意の締日付で行える。 (7) 商品の融通:他の営業所から商品を融通してもらう場合,商品を譲り受ける営業所で倉庫間移動入庫をシステムに登録し,商品を譲った営業所がシステムで承認する。承認後,商品の受渡しを行う。 〔新システムの概要〕 (1) サーバの構成:新システムは,集中型のサーバシステムで,M社のデータセンタに設置されたセンタサーバを,本社及び営業所のWebブラウザから利用する。 (2) システムの機能:新システムは,現行システムの機能を全て保有する。 (3) HTと自販機の連携:新システムのHTは新機種に替わる。HTの機能,自販機とHTとの通信仕様は,現行システムと同じである。 (4) HTとサーバの連携:新システムのHTはセンタサーバと直接通信する。売上,商品補充などのデータはHTがセンタサーバと通信することによって即時に更新される。サーバのバッチ処理の機能は,現行システムと同じである。 (5) 商品の注文タイミング:新システムに入力された営業所の注文は,朝10時で締め切られ,その後M社に自動的に発注される。 (6) 在庫,手数料計算:日次処理はセンタサーバで夜間定時に実行され,手数料計算処理を行う。手数料計算書は,本社で一括して印刷・送付する。手数料振込みも本社で一括して行う。 (7) 商品の融通:他の営業所からの商品の融通は,現行システムと同じである。  現行システムと新システムの主な相違点を表1に示す。
表1 現行システムと新システムの主な相違点 拡大
表1 現行システムと新システムの主な相違点
〔新システムへの移行方針〕  B社情報システム部のC課長は,新システムへの移行担当に指名され,担当役員から次の指示を受けた。 (1) 移行期間中も,営業所で通常どおり業務を行えるようにすること (2) 自販機設置先に迷惑をかけないこと (3) 全営業所の一括移行はリスクが高いので,順次移行する方法を検討すること (4) 移行期間中も,全社分の管理帳票などを出力できるようにすること  C課長は移行方針の検討に当たって,M社から新システムの仕様や性能の説明を受けた。現行システムと新システム(以下,両システムという)のマスタは互換性がないが,ツールの使用と手作業による項目追加によって,マスタデータの移行は可能である。営業所の注文,売上,HTの自販機売上情報などの営業所システムのトランザクションデータは,両システムで互換性があり,現行システムのデータを新システムで読み込める。しかし,本社システムのトランザクションデータは,両システムで互換性がなく,新システムでは読み込めない。HTは両システムで互換性がなく,現行システムのHTは,センタサーバと通信できない。 〔移行方法の具体化〕  C課長は,移行方針に基づいて,次のように移行方法を具体化した。 (1) 新システムのサービスは,期首である1月1日に利用を開始する。 (2) 本社では,両システムを1月から6月まで併用する。その間,本社で行う,従業員マスタ,自販機マスタ,商品マスタなどの修正業務については,両システムに同じ修正データを入力する。全社の管理帳票などは新システムだけから出力する。 (3) 営業所は,1月から6月までの移行期間中に順次移行する。営業所には,一度システムで実施すると再度実施できない業務があるので,移行した営業所は,新システムだけを利用する。また,ある業務における一部の処理を,移行期間中も問題なく行うためには,移行単位を営業所グループごとにする必要がある。 (4) 本社移行前日の12月31日に,全ての営業所で手数料計算処理を行った後,本社及び全ての営業所の現行システムの全マスタを新システムに移行する。 (5) 移行期間中は,現行システムを利用している営業所の営業所トランザクションデータを日次処理前に抽出し,本社の現行システム経由で新システムに,夜間に一括転送して新システムでも日次処理を実行する。 (6) M社への発注は,新システムの機能を利用して,新システムだけから行う。  移行期間中のシステム運用イメージを図1に示す。また,各営業所でのシステムの切替えは,表2の手順で行うこととした。
図1 移行期間中のシステム運用イメージ 拡大
図1 移行期間中のシステム運用イメージ
表2 各営業所でのシステム切替手順 拡大
表2 各営業所でのシステム切替手順
〔移行方法の説明〕  C課長は,移行方法について各部門に説明した。また,移行期間中だけの制約ではあるが,①現行システムを利用している営業所では,今までと同じタイミングで注文しても,発注処理で発注されるタイミングが今までとは異なる。そのため,通常どおりの運用ができない点に留意して業務を行うように依頼した。  移行方法の説明に当たり,営業部門から,表2の手順で各営業所のシステムを切り替えると,12月の手数料計算書が2枚に分かれることになり,業務上の問題があるとの指摘があった。そこで,表2の項番1の手順を変更し,手数料計算を12月31日に全営業所で行うのではなく,新システムにデータを転送して処理を行うことにした。

設問一覧 & 解答・演習

まずは解答を作成してみましょう。「解答例を見る」をクリックするとIPA公式解答例と採点基準が開きます。

設問1記述問題
制限字数:40 字以内
C課長は、ある業務における一部の処理を移行期間中も問題なく行うためには、移行単位を営業所グループごとに判断した。ある業務とは何か。その業務名を挙げ、そのように判断した理由を、40字以内で述べよ。
0 / 40 文字
設問2(1)記述問題
制限字数:40 字以内
〔移行方法の具体化〕について、(1)〜(3)に答えよ。
(1) 本社で両システムを併用し、マスタの修正業務で、両システムに同じ修正データを入力することにしたシステム上の理由を、40字以内で述べよ。
0 / 40 文字
設問2(2)記述問題
制限字数:30 字以内
〔移行方法の具体化〕について、(1)〜(3)に答えよ。
(2) 一度システムで実施すると、再度実施できない業務とは何か。業務名を二つ挙げ、再度実施できないシステム上の理由を、30字以内で述べよ。
0 / 30 文字
設問2(3)記述問題
制限字数:15 字以内
〔移行方法の具体化〕について、(1)〜(3)に答えよ。
(3) 移行期間中は、現行システムを利用している営業所でも、一部の業務が不要になる。その業務名を挙げ、不要になる理由を、15字以内で述べよ。
0 / 15 文字
設問3(1)記述問題
制限字数:35 字以内
〔移行方法の説明〕について、(1)、(2)に答えよ。
(1) 手数料計算を12月31日に全営業所で行うのではなく、新システムにデータを転送して処理を行うことにした場合、転送すべきデータは、どの期間のどのようなデータか。35字以内で述べよ。
0 / 35 文字
設問3(2)記述問題
制限字数:35 字以内
〔移行方法の説明〕について、(1)、(2)に答えよ。
(2) 本文中の下線①で、発注されるタイミングが今までとは異なる点を15字以内で述べよ。また、その理由を、処理タイミングに着目して35字以内で述べよ。
0 / 35 文字
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【出題趣旨】IPA公式発表
業務の効率向上,保守の容易化を狙って,全社のシステムを一括して移行することが多くなってきた。シス テムアーキテクトには,業務及びシステムの移行を計画することが求められている。 本問では,ある販売会社の業務及びシステムの移行を題材として,移行方針作成・移行計画立案・課題の管 理と対策について具体的な記述を求めており,新システムの目的,移行方針及び前提条件を正しく理解して, 移行計画を立案する能力を評価する。
【採点講評】IPA公式発表
問2 では,飲料販売会社を例にとり,業務とシステムの移行について出題した。全体として,正答率は低か った。 設問2(1)は,並行運用期間中,本社が現行システムと新システムに同じデータを入力し続ける必要がある理 由を問うた。“互換性”,“整合性”の記述はあるが,“現行システム”と“新システム”,“本社システム”と “営業所システム”の区別のついていない解答が散見された。 設問3(1)は,移行方法の説明の際に営業部門から指摘された業務上の問題への対策について問うたが,想定 している移行手順を理解できていないと思われる解答が多く見受けられた。また,締日が,例としてあげた20 日と月末しかないと思いこんだと想定される解答も散見された。 設問3(2)は,移行期間中だけの制限事項について,その内容と理由を問うたが,移行終了後の業務の変更点 と誤解したと想定される解答が多かった。問題文をよく読んで,現行業務の内容,現在の移行手順,移行計画 の全体の内容を理解して解答してほしい。 システムアーキテクトとして,業務とシステムの移行計画を立案・説明・実行・評価できるように心掛けて ほしい。
本問に関連するシステムアーキテクト重要用語解説
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